エスクリプトエナジー(旧エス・サイエンス/5721)の将来性と上場廃止リスクを解説

金融ライター K.Y

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エスクリプトエナジー(旧エス・サイエンス/5721)の将来性と上場廃止リスクを解説

エスクリプトエナジー(旧エス・サイエンス/5721)の9月15日終値は53円です。年初高値から81.3%下落していますが、安さだけで買える状態ではありません。将来性を評価するには、資金調達の立て直しと蓄電所の収益化を確かめる必要があります。

2026年9月16日時点で、上場廃止の決定や監理・整理銘柄への指定は確認されていません。ただし、継続的な営業赤字と新株予約権による希薄化は残ります。最新開示と株価を基に、回復の条件とリスクを解説します。

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社名変更後も売上の中心は金属・不動産、新規3事業は収益化前

社名変更後も売上の中心は金属・不動産、新規3事業は収益化前

同社はニッケルを起点とする老舗企業ですが、暗号資産と電力分野へ事業を広げています。新社名が示す成長戦略と、実際の収益源にはまだ開きがあります。売上を生む事業と準備中の事業を分けます。

27年3月期1Qの売上は金属不動産事業が全額を占める

同社は2026年4月1日、エス・サイエンスからエスクリプトエナジーへ改称しました。証券コード5721と東証スタンダード上場は変わっていません。現在の報告区分は、金属不動産、トレジャリー、アドバイザリー、グリッドの4事業です。

27年3月期1Qに売上を計上したのは金属不動産事業だけでした。トレジャリーはBTCの保有・運用、アドバイザリーは企業支援と投資、グリッドは蓄電池による電力取引を担います。BTC保有企業への転換は、営業収益の転換まで完了したわけではありません。

三崎優太氏はグリッド事業の助言役、社長就任とは異なる

三崎優太氏は2026年2月13日付で、グリッド事業のエグゼクティブアドバイザーとなりました。従来のクリプトアセット事業開発担当室は廃止されています。2025年4月の室長就任から、担当領域が変わっています。

9月16日に確認した会社公式情報の代表取締役は久永賢剛氏です。三崎氏の知名度や発信だけで経営権の移動を織り込むのは避けたいところです。提携先の三崎未来ホールディングスは、2つの蓄電所で総合調整を担当します。肩書きより、契約の履行と事業収益を追います。

株価53円は年初高値から81.3%安、8月の反発も続かず

株価53円は年初高値から81.3%安、8月の反発も続かず

株価はBTC関連の期待で急騰した後、2026年に大きく下落しました。8月後半には戻しましたが、9月15日は再び50円台前半です。長期の値動きと直近の反発を分け、現在の位置を確認します。

2025年6月に422円へ急騰、現在は高値を大幅に下回る

過去5年の週足では、2021年9月の35円前後から2025年初めの20円前後まで、低位での推移が続きました。その後、暗号資産投資への参入や三崎氏の参画への期待で買いが集まり、2025年6月17日に高値422円を付けています。

9月15日終値は422円から87.4%低い水準です。急騰前より株式数も増えており、過去の株価に戻るには、以前より大きな時価総額が必要になります。過去高値をそのまま回復目標には置けません。

エスクリプトエナジー(5721)の株価チャート|2021年9月13日週〜2026年9月14日週|週足、最終週は15日まで
TradingViewを参照し、Yahoo!ファイナンスの株価データで弊社作成。2021年9月13日週〜2026年9月14日週|週足、最終週は15日まで

年初高値283円に対し、49円の安値を2度付けた

2026年の年初来高値は1月5日の283円です。6月23日に49円まで下げ、8月19日にも同じ安値を付けました。9月15日終値53円は、年初高値から81.3%安い一方、49円からの戻りは8.2%にとどまります。

安値を割っていないだけで、上昇への転換が確認できたとはいえません。1月からの下落幅が大きく、価格の低さと企業価値の割安さは別問題です。49円を下回れば、直近2回の安値を維持できなかった形になります。反対に、反発後の安値が切り上がるかも確認します。

エスクリプトエナジー(5721)の株価チャート|2025年9月16日〜2026年9月15日|日足
TradingViewを参照し、Yahoo!ファイナンスの株価データで弊社作成。2025年9月16日〜2026年9月15日|日足

8月25日の62円から53円へ下落、戻りの継続が課題

8月20日に54円へ反発した後、8月25日の終値は62円まで上昇しました。しかし9月15日は53円と、そこから14.5%下落しています。9月10日は56円へ上げたものの、翌11日は53円へ反落し、15日まで同じ終値が続きました。

9月15日の出来高は39万9,000株で、8月20日の約241万株を下回ります。買いが持続しているとは言いにくい状況です。50円台前半の下値を保ち、60円前後の戻りを継続できるかが当面の確認点です。株価の戻りには新たな事業実績も必要になります。

エスクリプトエナジー(5721)の株価チャート|2026年6月1日〜2026年9月15日|日足
TradingViewより引用。2026年6月1日〜2026年9月15日|日足

27年3月期1Qは純損失5.13億円、評価損と全社費用が重い

エスクリプトエナジーの最新決算と財務状況

8月14日発表の27年3月期1Qが、9月16日時点で最新の決算です。増収でも営業赤字は拡大し、BTCの評価損が最終赤字を押し広げました。本業、投資評価、現金の残高を分けて確認します。

売上1.79億円に対し、営業損失は1.62億円

27年3月期1Qの売上高は前年同期比13.2%増の1.79億円でした。一方、営業損失は前年同期の1.02億円から1.62億円へ拡大しています。経常損失は5.12億円、純損失は5.13億円です。通期業績予想は未定、年間配当予想は0円となっています。

金属不動産事業は1,445万円の営業黒字でも、全社費用が1.73億円かかりました。アドバイザリーとグリッドの営業損失は、それぞれ150万円、238万円です。部門の小幅黒字だけでは全社の管理費用を吸収できず、新規事業の収益化に加えて費用の抑制も必要です。

エスクリプトエナジー27年3月期1Qの損益計算書
エスクリプトエナジー「27年3月期 第1四半期決算短信」2026年8月14日、添付資料7ページ。

BTC帳簿価額28.10億円は6月末の評価額

直近に公表された保有量は296.2406218BTCで、取得原価は約50億円です。6月末の帳簿価額は28.10億円となり、3月末の31.36億円から3.25億円減少しました。四半期末の評価損は営業外費用であり、営業損失とは別に計上されています。

この28.10億円を9月時点のBTC時価として使うのは不適切です。保有量が同じなら、円建てBTC価格が100万円動くと評価額は約2.96億円動きます。これは税金などを考慮する前の感応度です。BTCが値上がりしても、売却や運用収入がなければ現金収入とは一致しません。

現預金11.27億円と1年内償還予定社債7.65億円を確認する

6月末の現金及び預金は11.27億円で、3月末から3.75億円減少しました。預け金も4.19億円から136万円へ減っています。一方、投資有価証券は5.19億円、建設仮勘定は5.17億円へ増加し、資金が投資や建設中の設備へ移っています。

1年内償還予定の社債は7.65億円です。現預金との差額は約3.62億円ですが、全額を自由に投資できる余力とは扱えません。営業支出や設備代金の支払いも続くためです。1Qはキャッシュフロー計算書が未作成であり、現預金の減少額をそのまま営業赤字による流出額とは読めません。

エスクリプトエナジーの現預金・暗号資産・建設仮勘定
エスクリプトエナジー「27年3月期 第1四半期決算短信」2026年8月14日、添付資料5ページ。

上場廃止の決定は確認されず、営業赤字と管理体制は引き続き課題

上場廃止の決定は確認されず、営業赤字と管理体制は引き続き課題

9月16日に確認したJPXの監理・整理銘柄一覧と上場廃止銘柄一覧には、同社の掲載はありません。上場廃止が決まっている状態ではありませんが、財務と内部管理のリスクが消えたわけではありません。

2025年11月の公表措置は監理・整理銘柄の指定と異なる

東京証券取引所は2025年11月26日、旧エス・サイエンスへ公表措置を実施しました。第8回新株予約権について、1カ月の行使数量を発行済み株式数の10%以内とする制限を正しく認識せず、上限を超える行使を許したためです。

公表措置は、上場廃止の決定や監理銘柄への指定とは異なる対応です。会社は12月11日に経緯と再発防止策を公表しました。ただし資本政策の管理不備は、株式数の増加に直接関わります。今後も再発や追加措置の有無を確認し、過去の措置だけで安全とも危険とも決めつけない姿勢が必要です。

債務超過ではないが、継続企業の重要事象は残る

2026年6月末の総資産は54.91億円、純資産は45.22億円、自己資本比率は82.0%でした。現時点の決算で債務超過ではありません。一方、継続する営業損失を背景に、会社は継続企業の前提に関する重要事象等が存在すると開示しています。

会社は当面の運営資金を確保しているとして、重要な不確実性は認めていません。重要事象の存在と、継続企業の注記が必要な状態を混同しないようにします。ただし資産の約半分はBTCです。評価損の拡大や設備投資の追加負担が続けば、純資産と手元資金の双方に余裕がなくなる可能性があります。

株価53円・PBR約2.09倍には、新事業への期待が残る

株価53円・PBR約2.09倍には、新事業への期待が残る

株価が数十円でも、資産に対する市場の評価が低いとは限りません。業績予想が未定の同社は予想PERを算出できず、PBRと資産の中身が手掛かりです。株価と財務数値の基準日を明示して評価します。

PBRは6月末自己資本から計算、配当利回りは0%

9月15日終値53円と、最新開示の発行済み株式数1億7,772万2,409株で計算した時価総額は約94.19億円です。自己株式を除く株式数と6月末の自己資本から求めた1株純資産は約25.33円で、PBRは約2.09倍となります。

このPBRは9月の株価を6月末財務と比較した指標で、9月の純資産を示してはいません。BTC価格や有価証券評価が変われば、分母も変動します。年間配当予想0円のため、予想配当利回りは0%です。収益見通しが未定である以上、予想PERから割安さを説明する余地もありません。

BTC保有額と時価総額の差は、将来利益の保証ではない

BTC帳簿価額は総資産の約51.2%を占め、株価評価もその値動きに影響されます。ただし会社には投資有価証券や蓄電所関連資産もある一方、社債などの負債もあります。BTCだけを時価総額と比べても、株主に残る資産価値は計算できません。

さらに9月の時価総額と6月末のBTC帳簿価額を割った倍率は、同日時点の評価ではありません。本記事では現在のmNAVとは表記しません。蓄電所が利益を生むまでの費用、負債の返済、潜在株式数も含めて見ます。メタプラネットとの比較でも、保有枚数だけで同じ評価倍率を当てはめるのは避けます。

5,132BTCの従来計画より、調達実績と残る新株予約権を優先する

5,132BTCの従来計画より、調達実績と残る新株予約権を優先する

第10回新株予約権は行使期間を終え、調達額が当初計画を大きく下回りました。中期計画は見直しが必要とされ、第7回・第9回の新株予約権は別に確認する必要があります。計画値と確保済み資金を分けます。

第10回は行使率0.59%、調達額は2.73億円で終了

第10回新株予約権の行使期間は2026年6月30日に終了しました。総数1億7,514万3,159個のうち、行使されたのは103万666個です。行使率は0.59%、交付株式数は257万6,660株、払込総額は2億7,312万5,960円でした。

行使価額は1株106円で、期間中に市場価格がこれを下回る場面が多くありました。未行使の1億7,411万2,493個は期間満了により行使されていません。これを将来の調達余力として残すのは誤りです。既存株主の希薄化は限定的でも、投資資金が十分集まらなかった問題は残ります。

第10回新株予約権の行使率0.59%と調達額の公式開示
エスクリプトエナジー「第10回新株予約権 行使結果」2026年7月14日、1ページ。

第7回・第9回には別の行使条件と潜在株式がある

6月19日開示では、第7回の残存分は205万株、行使価額は135円でした。株価下落により強制行使条項が発効し、2027年9月4日までの行使が必要とされています。全行使なら約2.77億円の払込ですが、発効しただけで現金が入ったわけではありません。

有価証券報告書の5月末確認では、第9回も2,205万株分が残っています。当初行使価額122円、修正時の下限68円で、9月15日株価はいずれも下回ります。第10回終了で希薄化がなくなったとはいえず、同時に残存分を確実な入金として投資資金へ計上するのも避けます。

29年3月期5,132BTCは改定前の計画値として扱う

2026年1月の中期計画は、27年3月期1,858BTC、28年3月期2,737BTC、29年3月期5,132BTCを掲げました。しかし8月の決算では、資金調達の未達に伴い投資計画と事業計画の見直しが必要と明記されています。

9月16日に確認したIR一覧では、改定後の保有目標や通期利益予想は公表されていません。従来の目標枚数を将来の確定保有量として企業価値に加えるのは無理があります。次の計画では、調達予定額だけでなく実際の払込時期、購入予算、蓄電所へ回す資金との配分まで必要です。

将来性の具体化は蓄電所の引渡しと1株当たりBTCの改善から

将来性の具体化は蓄電所の引渡しと1株当たりBTCの改善から

基本的には、成長計画の再構築を待つ段階です。株価の持続的な回復には、BTC価格の反発に加え、新規事業の売上と株主に残る価値の増加が必要です。次に実績を確かめられる工程を整理します。

長州周南は2026年11月、薩摩伊佐は2027年2月に引渡し予定

SCE長州周南蓄電所は山口県周南市で、東京ガスが電力取引と運用を担います。SCE薩摩伊佐蓄電所は鹿児島県伊佐市で、RE100電力と契約しました。両施設は出力2MW、容量8MWhで、卸電力市場などでの充放電から収益を得る計画です。

工事完了・引渡し予定は、長州周南が2026年11月、薩摩伊佐が2027年2月です。これは公表済みの予定で、営業運転や黒字化の実績ではありません。引渡し後の売上に加え、充電に使う電力費、運用委託費、減価償却費を差し引いて利益が残るかまで確認します。

長州周南蓄電所の2026年11月引渡し予定と東京ガスとの契約
エスクリプトエナジー 蓄電所開示、2026年4月7日、2ページ。
薩摩伊佐蓄電所の2027年2月引渡し予定とRE100電力との契約
エスクリプトエナジー 蓄電所開示、2026年6月18日、2ページ。

追加調達では総保有量より1株当たりBTCの増減を見る

開示されたBTC保有量と6月末の自己株式控除後株式数で計算すると、1株当たりBTCは約0.000001667BTCです。追加発行でBTCを購入する場合、総保有量が増えても、株式数の増加が速ければ1株当たりの持分は減ります。

BTC増加率が株式増加率を上回るかが、追加調達を評価する基準です。調達資金を社債返済や設備建設へ回す場合は、BTCが増えなくても財務改善や将来利益に結び付く可能性があります。資金使途ごとに成果を確かめ、発行株式数の増加だけを買い材料として扱わないようにします。

次の中間決算では現金残高と新規事業売上を確認する

次の中間決算では、BTCの評価損益に加え、現金残高と社債残高の変化、新規事業の売上、全社費用を確認します。9月16日時点で会社公式の決算発表日は確認できないため、日付は断定しません。蓄電所は公表された引渡し工程の進捗も追います。

収益化前の支出が増えるのに調達が進まなければ、追加取得や設備計画が遅れる可能性があります。反対に、引渡し完了と売上計上が続けば、BTC評価益以外の回復根拠が生まれます。具体的な契約額や利益予想が出るまでは、根拠の薄い目標株価を置かず、実績の増加を待つ投資姿勢が妥当です。

まとめ|エスクリプトエナジーは上場状況と資金・収益化を分けて確認

エスクリプトエナジーの将来性と投資リスク

エスクリプトエナジーの上場廃止は決まっていません。ただし、営業赤字、資金調達の未達、残る新株予約権は投資上のリスクです。株価の安さだけでは買いの根拠になりません。

今後は、蓄電所の引渡しと収益化、追加調達による1株価値の変化を優先して確認します。BTCの評価益だけで本業が改善したとは判断できません。

中期計画の数字を追うより、確保済みの現金、返済負担、実際の売上を積み上げて評価したい銘柄です。

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執筆者情報

nari

金融ライター K.Y

金融ライター

2016年大手証券会社に入社、2018年に最大手オンライン証券会社に入社し、機関投資家部門(ホールセール)を立ち上げ、翌年2019年には同社シンガポール拠点設立。2022年より日系証券会社の運用部にてポートフォリオマネジャーの経験を得て以降、一貫して運用業務に従事。

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