東証スタンダードに上場しているエスクリプトエナジー(5721)は、2026年4月1日に旧社名「エス・サイエンス」から社名を変更した銘柄です。ニッケル製品を扱う1946年創業の老舗が、ビットコイン投資を成長の柱に掲げて株価を大きく動かしてきました。
株価は2025年に30円台から数倍に急騰しましたが、その後は急落し、2026年6月には50円以下の年初来安値をつけました。三崎優太氏(元青汁王子)の関与や1,000BTCの取得目標など話題は豊富な一方、26年3月期は純損失25億円超を計上し、希薄化や上場廃止リスクを心配する声も増えています。
本記事では将来性と上場廃止リスクを、最新の株価と決算をもとに一次情報で整理します。
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エスクリプトエナジーとは|ニッケル老舗からビットコイン企業への転換

エスクリプトエナジー(5721)は、ニッケル地金などの非鉄金属を主力にしてきた企業で、不動産や学習塾も手がけてきました。
2025年3月に暗号資産投資事業への参入を発表してから方向性が一変し、ビットコインの保有量で企業価値を高める戦略へ舵を切ります。
2026年4月1日には社名を旧「エス・サイエンス」から「エスクリプトエナジー株式会社」(英文名S Crypto Energy Inc.)へ変更しました。暗号資産企業の姿勢を鮮明にした形です。証券コードは5721のまま変わりません。
2026年4月に社名変更を実施|事業目的に暗号資産を追加
同社は2026年4月1日付で社名変更を正式に実施しました。単なる名称の刷新ではなく、企業の方向性そのものを暗号資産へ寄せる決定です。
定款変更では事業目的の筆頭に「暗号資産の投資および運用ならびに関連するサービスの提供」を追加しました。暗号資産の保有・運用を担うトレジャリー業務やマイニング、ブロックチェーン向けのAI演算処理も盛り込んでいます。
あわせて発行可能株式総数を2億株から7億株へ引き上げ、将来の資金調達に備える体制を整えています。発行枠の拡大は機動的な調達を可能にする一方、既存株主にとっては株式が薄まる希薄化リスクと隣り合わせです。
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三崎優太氏が室長に就任|実際の持株は変動する点に注意
暗号資産事業を語るうえで欠かせないのが三崎優太氏(元青汁王子)の関与です。三崎氏は2025年4月24日に同社のクリプトアセット事業開発担当室長へ就任し、300万人を超えるフォロワーへの発信力で事業の認知拡大を担ってきました。
ただし持株の経緯は少し複雑です。三崎氏は2025年3月末時点で約4.59%を保有していましたが、その後いったん全株を売却しました。さらに2025年8月、同社が三崎氏らに割り当てた第9回新株予約権を引き受ける形で再び参画しています。新株予約権は行使して初めて株式に変わるため、行使の有無で持株は変わります。
最新の保有状況は同社の適時開示や大量保有報告書で確認するのが確実です。発信力による話題性と、本人の実際の持株は分けて見る必要があります。なお2026年1月13日には、三崎氏が代表を務める三崎未来ホールディングスと蓄電池やマイニング、AIデータセンターで業務提携を結びました。
エスクリプトエナジーはなぜ急騰したのか|需給と話題性

エスクリプトエナジーの株価が急騰した一番の理由は、業績の改善ではなく「ビットコイン投資への期待」と「小型株ならではの需給の偏り」です。
発行済み株式数や時価総額が小さい銘柄は、買いが集中すると株価が跳ねやすく、売りが出ると急落しやすい性質があります。同社はそこへビットコインという強いテーマと三崎氏の発信力が重なり、材料が出るたびに値が大きく動く展開になりました。ここでは急騰の経緯と、その値動きの裏側にある仕組みを順番に見ていきます。
30円台から数倍に急騰|2025年の上昇とその後の急落
急騰のきっかけは2025年3月の暗号資産投資事業への参入発表でした。それまで30円前後で推移していた株価は、ビットコイン投資という明確なテーマを得て数倍の水準まで上昇します。
背景には、先にビットコイン保有戦略で株価を大きく伸ばしたメタプラネットの存在があり、市場が同社を「第2のメタプラネット」と見立てて資金を集めた面があります。社名変更や投資上限の撤廃といった発表が出るたびに買いが集まり、ストップ高をつける場面もありました。
ただし2025年末以降はビットコイン相場の調整とともに株価も下落し、上昇が一本調子ではない点には注意が必要です。
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材料が出るたびに跳ねる|小型株ゆえの値動きの荒さ
急騰と同じ仕組みで、急落も起こりやすいのがこの銘柄の特徴です。時価総額が小さいため、少しの売買代金でも株価は大きく動き、いったん売りが連鎖すると逃げ場のない下げになりやすい性質があります。
たとえば2026年1月13日には、三崎未来ホールディングスとの業務提携と、三崎優太氏が率いる新電力サービス「でんき0」の本格始動が同日に発表されました。好材料が重なったにもかかわらず、同社株はこの日売られています。

主な要因は、翌14日が第10回新株予約権(株主割当)の権利落ち日だったことです。この予約権は行使に1株あたり106円の払い込みが必要で(1個=2.5株)、増資に応じない投資家の手仕舞い売りが権利落ち前に出やすい地合いでした。新サービスの収益性を疑問視する声もあり、材料の好悪より需給が優先される形で株価は下押しされています。
ただ、この下げは一方通行では終わっていません。1月中旬以降は一転して買いが集まり、株価は1週間ほどで大きく水準を切り上げました。数日のうちに急落と急騰が入れ替わるこの振れ幅こそ、小型株ならではのリスクといえます。
26年3月期は純損失25億円|暗号資産の評価損が直撃した通期決算

株価の派手な動きとは対照的に、足元の業績は厳しい状態が続いています。直近の26年3月期通期決算では、売上高こそ不動産物件の売却で大きく伸びましたが、暗号資産の評価損などが響き、最終損益は25億円を超える赤字になりました。
ビットコイン投資の原資を株式市場からの調達に頼る構造のため、業績と株価、そして資金調達が複雑に絡み合っています。ここでは決算の中身と、保有するビットコインの状況を具体的な数字で確認します。
売上は14.4億円でも経常損失25億円|不動産売却頼みの中身
26年3月期の通期決算は、見かけの増収と大幅赤字が同居する内容でした。売上高は14億4,100万円(前期比+127.4%)と大きく伸びましたが、その主因は不動産物件の売却で、本業が伸びた結果ではありません。
利益面では暗号資産の評価損などが重くのしかかり、経常損失25億2,400万円、当期純損失25億2,900万円という大幅な赤字を計上しました。総資産は暗号資産の増加で前期比+88.6%の56億6,800万円まで膨らんでいます。期末配当は見送りで無配です。
なお同社は、暗号資産の評価損益を今後は営業外損益で計上する方針へ変更し、本業の損益と価格変動の影響を切り分けやすくしています。

含み損は約37%に拡大|BTC約296枚で1,000枚目標は道半ば
赤字の大きな要因は、保有するビットコインの含み損です。同社は2025年8月に初回購入を実施し、その後も買い増しを進めてきました。保有量は約296BTCで、国内の上場企業では保有6位の水準です。
ただしビットコイン相場の調整で含み損は膨らみ、2026年3月期末時点では含み損が約37%(およそ19億円)に拡大しています。同社は従来の年間投資上限96億円を撤廃し、中期的に1,000BTCの取得を目標に掲げていますが、現在の保有量の約3.4倍にあたり、達成は道半ばです。
ビットコイン価格が上がれば含み益が利益を押し上げますが、下がれば損失がさらに膨らむため、業績がビットコイン相場に強く左右される構造です。
エスクリプトエナジー上場廃止説の真相

「上場廃止」という検索が多いのは、同社が過去に東証を上場廃止した歴史を持ち、ボロ株と呼ばれてきたためです。赤字が続いている点も不安を後押ししています。
結論を先にお伝えすると、現時点で財務面からの上場廃止リスクは高くありません。ただし、ガバナンス面では東証から公表措置を受けた事実があり、注意は必要です。ここでは過去の経緯、現在の財務状況、そして規律面の問題を分けて整理します。
なぜ上場廃止が検索されるのか|ボロ株の評判と赤字
「エス・サイエンス 上場廃止」という検索が多いのは、同社が長く低位株(ボロ株)の代表格と見られ、株価が荒い値動きを繰り返してきたためです。加えて赤字が続いている点や、暗号資産への大胆な転換が、上場を続けられるのかという不安を呼びやすくしています。
ただし多くの検索は、今まさに上場廃止が決まった話ではなく、こうした評判と足元の赤字を重ねた漠然とした不安から生まれているとみられます。現在、同社は東証スタンダード市場に上場しています。次の項目で、財務と規律の両面から実際のリスクを確認します。
現在は債務超過ではない|純資産はむしろ増加している
財務面から見ると、足元で上場廃止に直結する状態にはありません。上場廃止の代表的な基準のひとつが、負債が資産を上回る債務超過(純資産がマイナスになる状態)ですが、同社はこれに当てはまっていません。
第三者割当増資や新株予約権の行使で資本が増えており、26年3月期末の純資産は47億0,100万円(前期比+63.7%)と、赤字を出しながらもプラスを保っています。ただし決算短信では、継続的な営業損失を理由に「継続企業の前提に関する重要事象」が存在すると開示されている点に注意が必要です。
会社は不動産の売却と第三者割当増資で当面の資金を確保しており、継続企業の前提に関する注記は不要と判断しています。とはいえ純資産を支えているのは本業の利益ではなく外部からの調達であり、調達が止まれば財務の前提は変わります。
2025年11月に東証から公表措置|新株予約権の制限超過行使
財務とは別に、規律の面では見逃せない事実があります。同社は2025年11月26日、東京証券取引所から公表措置を受けました。これは上場廃止や監理銘柄への指定ではなく、企業行動規範に違反した場合に取引所が事実を公表する措置です。
理由は、MSCB(株価に応じて行使価額が修正される転換社債型の新株予約権)に関する遵守事項への違反でした。同社は買受人との契約で、1か月に発行済み株式の10%を超える行使(制限超過行使)をさせない取り決めをしていました。
しかしその内容を適切に理解しておらず、2025年10月に10%を超える行使が行われていたと判明しました。上場廃止には当たらないものの、資本政策の管理体制に課題があった事実と受け止める必要があります。
エスクリプトエナジーの将来性をどう見るか|今後のシナリオ

エスクリプトエナジーの将来性は、PER(株価収益率)のような従来の指標では測りにくくなっています。評価の軸が「ビットコイン価格」と「資金調達の成否」の掛け算に移っているためです。
株価は2026年6月に50円を下回る安値をつけており、ビットコイン相場の調整が重しになっています。今後の株価は、ビットコインが強気相場を取り戻せるか、そして同社が1,000BTCの目標を実際に積み上げられるかにかかっています。ここでは上振れと下振れ、2つのシナリオに分けて今後の見通しを整理します。

上振れシナリオ|ビットコイン高と調達成功が生む再評価
上振れの条件は、ビットコイン価格の上昇と、有利な株価水準での資金調達の両立です。この2つがそろえば、保有資産の含み益が企業価値を押し上げ、前向きな循環が生まれます。
実際にビットコインの保有枚数が着実に増えれば、株価は「期待」だけの段階から「実績」に基づく再評価へ進み、さらに高い水準を目指す余地があります。1,000BTCという目標に向けて保有が積み上がっているかどうかが、上昇が続くかを見極める手がかりです。
ただしこの好循環は、ビットコイン相場と調達環境がともに良好であることが前提で、片方でも崩れると一気に下振れへ傾きます。
下振れシナリオ|希薄化と市況悪化が重なる急落リスク
下振れで最も警戒すべきは、ビットコイン安と希薄化が同時に進む展開です。ビットコイン価格が下がれば含み損がさらに膨らみ、業績の足を引っ張ります。
そこへ新株発行による希薄化が重なると、1株あたりの価値が下がり、既存株主の重しになります。発行可能株式数を7億株まで広げた点も、将来の希薄化余地が大きいことを示しています。
市場が「調達疲れ」を起こしたり、資本政策への不透明感が強まったりすれば、株価の下落速度はビットコインそのものを上回る可能性もあります。時価総額が小さいぶん、売りが連鎖したときの下げは急になりやすい点を覚えておきましょう。
プロが重視する向き合い方|需給とテクニカルで守る

エスクリプトエナジーのように材料で激しく動く銘柄と向き合うには、業績予想よりも「材料の鮮度」と「需給の癖」を優先する姿勢が役立ちます。
ファンダメンタルズが弱いぶん、テクニカルの節目や市場の雰囲気が株価を決める場面が多いからです。ここでは、希薄化を前提にした持ち高の考え方と、急な値動きに振り回されないための入り方を紹介します。短期で狙う場合も中期で付き合う場合も、リスク管理を最優先に組み立てることが大切です。
希薄化を前提にした持ち高の管理
この銘柄では、新株予約権の行使が実質的に「売り在庫の放出」と同じ意味を持ちます。材料に飛びつく前に、発行済み株式数に対して未行使の新株予約権がどれだけ残っているかを必ず確認しましょう。
自分の持分が将来どの程度薄まる可能性があるのかを冷静に把握すれば、リスク許容度を超えた過度な集中投資を避けられます。発行可能株式総数が7億株まで広がっている点も踏まえ、保有金額は資産全体の中で小さめに抑えるのが安全です。
希薄化を「いつか起きるかもしれない話」ではなく「前提条件」と捉えて織り込む姿勢が、この銘柄で資産を守る第一歩になります。
底値の逆張りより、トレンド転換を確認してから入る
値動きが極めて荒いため、値ごろ感だけで「そろそろ底」と判断して逆張りで買うのは危険です。下げている銘柄はさらに下げることが多く、底を当てにいく取引は損失が膨らみやすいからです。
おすすめは、材料が出たあとの出来高の伸びを確認し、5日線や25日線といった移動平均線(MA)を明確に上抜けるなど、トレンドが上向いた事実を待ってから分散して入る方法です。後追いになっても、根拠のある場面でエントリーするほうが生き残りやすくなります。一度に資金を投じず、複数回に分けて入ることで、急落時のダメージも抑えられます。
まとめ|エスクリプトエナジーの今後
エスクリプトエナジー(5721)は、ビットコイン投資という強いテーマと三崎優太氏の発信力で株価を大きく動かしてきた銘柄です。社名変更や1,000BTC目標など上方向の材料がそろう一方、26年3月期は純損失25億円超を計上しました。2026年6月には株価が50円以下の年初来安値まで下げ、希薄化とビットコイン安に挟まれた苦しい状態が続いています。
上場廃止については、ボロ株のイメージや赤字から不安視されますが、現時点で純資産はプラスで、財務面から直ちに上場廃止となるリスクは高くありません。ただし継続的な営業損失で「継続企業の前提に関する重要事象」が存在し、2025年11月には東証から公表措置も受けています。
資本政策の管理体制には注意が必要です。短期で狙うなら材料の鮮度と出来高を、中期で付き合うなら実際のビットコイン保有増と資本政策の透明性を、冷静に確認していきましょう。
なお本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。

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執筆者情報
金融ライター
2016年大手証券会社に入社、2018年に最大手オンライン証券会社に入社し、機関投資家部門(ホールセール)を立ち上げ、翌年2019年には同社シンガポール拠点設立。2022年より日系証券会社の運用部にてポートフォリオマネジャーの経験を得て以降、一貫して運用業務に従事。

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