株を買った値段より高く売って得た利益を、キャピタルゲイン(譲渡益)と呼びます。ただし、売却画面に表示される金額がそのまま手元に残る利益ではありません。買付と売却の手数料、さらに口座の種類に応じた税金を差し引いて、はじめて手取りの利益が見えてきます。
売って戻ってくる元手と、投資で増えた利益は別の数字です。売却代金、費用控除後の利益、税引後の手取りを分ければ、証券口座の表示も読みやすくなります。以下の計算例は、日本に住む個人の国内上場株を想定しています。
キャピタルゲインは値上がりから生まれる利益

キャピタルゲインは、保有している資産の価格が上がった分から生まれる利益です。株の場合は利益が確定するタイミングと、値下がりしたときの扱いを合わせて押さえると、後の計算が理解しやすくなります。
買った価格より高く売ると利益が確定する
キャピタルゲインは、株を買値より高い価格で売った時点で確定する利益です。ただし、売り注文を出しただけでは取引は確定しません。買い手と条件が合い、売買が成立する「約定」に至って初めて売却価格と株数が決まります。
仮に1株1,000円で100株を買い、半年後に1株1,200円で全株を売ったとします。値上がり幅は1株あたり200円で、100株分では20,000円です。この20,000円が、手数料や税金を引く前の値上がり益にあたります。指値注文は希望価格を指定できますが、その価格で必ず売れる保証はありません。
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売る前の含み益とは利益が確定する時点が違う
売る前の値上がり分は含み益と呼ばれ、売却が約定するまでは金額が確定しません。含み益も価格変動による利益の一種ですが、本記事では売却で確定した利益を中心に扱います。
先ほどの例で、株価が1,200円の日に売らずに持ち続けたとします。その時点の含み益は20,000円ですが、翌月に1,050円まで下がれば含み益は5,000円に縮みます。証券口座の評価損益は日々変わる途中経過の数字です。買値を割り込めば含み損に変わります。税金は原則として、売却で確定した利益に対して計算されます。
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安く売って損失が出るとキャピタルロスになる
買値より安く売ると、その差額はキャピタルロス(譲渡損失)として確定します。値上がり益と同じく、損失も売却した時点で金額が決まります。
1株1,000円で100株を買い、1株850円で売った場合、価格差による損失は15,000円です。手数料がかかれば損失はさらに広がります。課税口座の上場株式で生じた損失は、同じ年の他の上場株式等の譲渡益と相殺でき、所定の確定申告を続けるなどの条件を満たせば、控除しきれない分を翌年以降3年間繰り越せます。一方、後述するNISA口座の損失にはこの扱いがありません。
株の利益は売却代金から元手と費用を引く

株の利益は、値上がり幅だけを見ても正確にはわかりません。売却代金から取得費と売却時の費用を引くのが基本の式です。ここでは仮定の数値を使い、計算の順番を確認します。
売値と買値の差に株数を掛けて計算する
手数料を考えない最も単純な計算は、(売値−買値)×株数です。日本株は多くの銘柄が100株単位で売買されるため、1株あたりの差は小さく見えても、株数を掛けると金額が大きくなります。
計算に使う株数は保有数ではなく、実際に売った数です。300株のうち100株だけ売るなら、確定する価格差の利益は100株分に限られます。残り200株の値上がり分は含み益のままです。また、異なる価格で買い増した株では、最後の買値だけを使うと利益を誤ります。証券会社が計算した平均取得単価と、今回の約定株数を照合する必要があります。
取得費には買付時の手数料も含まれる
税金の計算で使う取得費は、購入代金に買付手数料を加えた金額です。売却時の手数料は取得費ではなく、譲渡費用として別に差し引きます。
本記事の仮定では、購入代金100,000円に買付手数料100円を足し、取得費は100,100円です。売却代金120,000円から取得費100,100円と売却手数料100円を引くと、利益は19,800円になります。買付手数料は取得費に含めた時点で反映済みのため、別途もう一度引くと二重に差し引く計算になります。手数料は説明用の仮定で、実際の金額は証券会社や料金コースで異なります。
売却代金と利益率は別の数字として確認する
売却代金は売った株の総額であり、利益ではありません。仮定の例では売却代金が120,000円でも、利益は19,800円です。
利益率も、どの数字を分母にするかで変わります。価格差だけで見ると200円÷1,000円で20%ですが、取得費を基準にすると19,800円÷100,100円で約19.78%です。分母に買付手数料が入り、分子から売却手数料が引かれるため、数字が少し下がります。複数の取引を比べるときは、同じ基準の利益率で並べると判断を誤りにくくなります。
税引後の利益は口座の種類で変わる

同じ19,800円の利益でも、どの口座で売ったかによって手元に残る金額は変わります。課税口座かNISA口座か、課税口座なら源泉徴収の設定がどうなっているかを順に確認します。
課税口座では譲渡益に税金がかかる
特定口座や一般口座といった課税口座で国内上場株を売って利益が出た場合、2026年時点の標準税率は20.315%です。内訳は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です。
仮定の利益19,800円に20.315%を掛けると税額は約4,022円で、税引後の利益は約15,778円です。端数処理や他の取引との通算は簡略化しています。2027年からは防衛特別所得税の導入と復興特別所得税率の引下げが行われますが、標準的な源泉徴収の合計税率は変わりません。この税率は上場株式等の譲渡益の場合で、すべての投資商品に当てはまるわけではありません。

特定口座は源泉徴収の有無を確かめる
特定口座には源泉徴収ありと源泉徴収なしの2種類があり、どちらを選んだかで確定申告の手間が変わります。
源泉徴収ありでは、証券会社が口座内の年間損益を計算して税金を徴収するため、原則として申告不要です。途中で損失が出ると通算され、徴収済みの税金が調整される場合もあります。源泉徴収なしは非課税ではなく、申告が必要なら年間取引報告書を使います。申告要否は他の所得等にも左右され、別の証券会社との損益通算には確定申告が必要です。
NISAの売却益は非課税だが損失は通算できない
NISA口座で買った上場株を売って得た利益には、税金がかかりません。仮定の例なら19,800円がそのまま税引後の利益になり、課税口座より約4,022円多く残ります。
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その反面、NISA口座で出た損失は課税口座の利益と通算できず、翌年以降への繰越控除もできません。たとえばNISAで15,000円の損失、特定口座で19,800円の利益が出ても、特定口座の19,800円には通常どおり課税されます。利益への税負担を減らす制度でも、値下がり自体を補償する仕組みではありません。
インカムゲインとは利益を得る仕組みが違う

株から得る利益には、売却益のほかにインカムゲインがあります。代表例は配当です。受け取るタイミングと条件が売却益とは異なるため、分けて整理すると損益を正しく把握できます。
配当は保有中に受け取り売却益とは分ける
配当は企業が利益の一部を株主に分配するお金で、株を売らずに持っている間に受け取るインカムゲインです。売却で確定するキャピタルゲインとは、利益が生まれる仕組みが異なります。
配当の権利を得るには、権利付最終日の日中取引終了時点で現物株を保有します。同じ日の日中取引で買って売ってしまうと、配当の権利は得られません。権利付最終日の夜間PTSで買っても、その回の配当の権利には間に合いません。権利取得後に売却しても、既に得た配当の権利は残ります。
同じ株でも配当と売却益の両方を得られる
1つの株から、保有中の配当と売却時の値上がり益を両方得る場合があります。ただし2つは別々に計算し、合算するときも内訳を分けて記録します。
仮に年間配当が1株40円で、中間と期末に20円ずつ支払う株を100株持つとします。両方の権利を得れば配当は税引前で4,000円です。期末の権利を得る前に売れば、受け取れるのは中間分の2,000円だけです。売却益は仮定の例と同じく19,800円が別に生まれます。NISA口座で上場株の配当を非課税にするには、株式数比例配分方式の選択が必要です。

値上がり益は短期売買だけで生まれるわけではない

キャピタルゲインと聞くと、短い期間で売買を繰り返すイメージを持つ方も少なくありません。実際には保有期間の長さに関係なく、買値より高く売った差額が売却益になります。
企業の成長を長く待つ投資でも売却益を狙える
企業の売上や利益が年月をかけて伸びると、その成果が株価に反映され、長期保有の末に売却益が生まれる場合があります。売却益の計算式は、保有期間が数日でも10年でも同じです。
仮に1株1,000円で買った株を5年間持ち続け、その間に企業の利益が伸びて株価が1,500円になったとします。100株なら価格差は50,000円です。手数料が有料の取引なら、売買回数を減らすほど費用を抑えられます。一方で、5年の間に業績が計画どおり伸びないおそれもあり、利益の伸びを既に高い株価で織り込んでいれば、増益でも値下がりし得ます。
配当がない株でも値上がり益を得る場合がある
配当を出さない無配の株でも、株価が上がれば売却益を得られます。企業は利益を株主へ配るほか、設備投資や研究開発に回して、将来の収益拡大を目指す場合があります。
投資した設備の稼働や新製品の販売が進むまで、支出が先行し利益の回収に時間がかかる場合もあります。その結果、業績が伸びて株価が上がれば、配当がなくても売却時に値上がり益が生まれます。反対に成長が止まれば、配当という収入源もないまま株価だけが下がる場合もあります。配当の有無だけでは投資先の良し悪しは決まりません。無配の理由が成長投資なのか、赤字で資金が不足しているためなのかで、事業の状態は大きく異なります。
売却益を狙うときは損失と資金の期限も考える

売却益は、売却代金が取得費と売却費用の合計を上回って初めて生まれます。値下がりしたときの損失と、お金が必要になる時期との関係も、株を買う前に金額と時期を具体的に考えておきましょう。
株価が下がれば予定した利益は得られない
売却益は売る時点の株価で決まるため、買ったときに想定した利益が得られるとは限りません。業績の悪化や市場全体の下落で、株価が買値を下回る場合もあります。
仮に1,200円で売るつもりで1,000円で買った株が、景気の悪化で900円まで下がったとします。この時点で売れば、100株で価格差10,000円の損失に加え、売買手数料200円がかかります。値上がりを待つ間に含み損が広がるケースもあるため、売却益の計画は値下がりした場合の損失額とセットで考えましょう。
必要な時期までに売れるとは限らない
売り注文を受け付けても、希望する時期に希望する価格で売れるとは限りません。取引の少ない銘柄では買い手が見つかりにくく、ストップ安で売買が成立しない日もあります。
国内株の受渡日は通常、約定日を含めて3営業日目(2営業日後)です。銀行へ出金できる日は証券会社の手続にも左右されます。半年後に使う予定のお金で株を買うと、その時期に値下がりしていても売らざるを得なくなります。売却の成立だけでなく、支払日に間に合う出金日程も確かめます。
利益だけでなく取引全体の損益を確認する
1回の取引で利益が出ても、同じ年の他の取引で損失が出ていれば、全体の成果は小さくなります。売却益を評価するときは、年間の取引をまとめて見るのが基本です。
仮に費用控除後でA株が19,800円の利益、B株が15,000円の損失となり、同じ年の課税口座で通算できる場合、合計の損益は4,800円です。損益通算により、税金はこの4,800円をもとに計算されます。別の例で、費用控除前の価格差による利益を集計するなら、10往復分の手数料も差し引きます。1往復200円なら計2,000円です。既に費用控除後の損益を集計した場合は、手数料を重ねて引きません。
まとめ|キャピタルゲインは費用と税金を引いて捉える

キャピタルゲインの手取りは、売却代金から元手・費用・税金を分けて計算すると明確になります。入金額そのものを利益と取り違えないのが出発点です。
含み益は、売買が成立するまで変動します。利益を見込んで支出を先に決めず、使う時期の近い資金は値動きにさらさない管理が必要です。
実際の計算には取引報告書や年間取引報告書を使えます。取得費、売却費用、口座区分を確認し、費用を二重に差し引いていないかまで照合すると、年間の取引結果を正しく把握できます。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。

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