「メタバース」という言葉は、2021年から2022年の投資ブーム時に比べて聞かれなくなりました。Metaは巨額投資を続けながらもVR戦略を絞り込み、国内でもサービス終了や事業名の変更が相次いでいます。
ただし、技術まで消えたわけではありません。ゲーム・UGC、空間コンピューティング、スマートグラス、産業用デジタルツインへ需要が分かれました。この記事では、2026年8月時点の決算と事業開示から、メタバース関連銘柄の現在地を整理します。
メタバース相場は終わったが技術需要は4分野に移った

かつてのメタバース相場は、仮想土地やNFT、VRゴーグル、バーチャル展示会をひとまとめにして成長を期待するテーマでした。2026年現在、この一括評価は通用しません。消費者が長時間滞在する仮想空間は一部に限られ、企業も採算の見えない大型開発を見直しています。
一方、3D空間を作る技術は用途を変えて残りました。ユーザーが集まるゲーム経済圏、現実に重ねて使う空間コンピューティング、日常装着を狙うスマートグラス、工場やロボットを仮想環境で再現するデジタルツインです。投資では4分野を分けて考える必要があります。
MetaはVR中心の戦略を縮小しHorizon Worldsをモバイルへ移した
Metaの動きは、従来型メタバースの限界を端的に示しています。26年4〜6月期のReality Labsは売上高4.31億ドルに対し、営業損失が46.19億ドルでした。売上の10倍を超える損失であり、VR機器だけでは投資を回収できていません。
同社はQuest向けVRとHorizon Worldsを分離し、Worldsをほぼモバイル専用へ移す方針です。ゴーグルの普及を待つより、既存スマホ利用者へ届ける選択だと読めます。VR上の巨大経済圏という当初像は、すでに修正段階へ入りました。
Roblox型のゲーム・UGC経済圏は利用者を増やしている
仮想空間でも、遊ぶ目的とクリエイター経済が成立したサービスは成長しています。UGCはユーザー自身がゲームやアイテムを作る仕組みです。Robloxの26年1〜3月期は売上高が前年同期比39%増の14億ドル、予約額は43%増の17億ドルでした。
1日当たり利用者数は35%増の1.32億人、利用時間は43%増の310億時間です。メタバースという看板ではなく、ゲーム、交流、制作、課金が循環する設計が利用を支えています。ただし、未成年者の安全対策や年齢確認は成長率を抑える要因です。
空間コンピューティングとスマートグラスが日常利用を狙う
AppleはVision Proをメタバース端末ではなく、空間コンピュータと位置づけました。現実の部屋にアプリや映像を配置し、仕事や映像視聴へ使う発想です。ソニーも3D制作向けXR機器やモーションキャプチャーを展開し、利用目的を制作現場へ寄せています。
もう一つの流れが、カメラや音声AIを組み込むスマートグラスです。没入型ゴーグルより軽く、撮影、翻訳、検索など日常動作へ入りやすい利点があります。投資テーマが戻るなら、重いVR端末の販売台数より、グラスの利用頻度と対応サービスが先行指標になります。
デジタルツインはフィジカルAIの開発基盤になった
デジタルツインは、工場、都市、機械など現実の対象を仮想空間へ再現する技術です。見た目を楽しむだけでなく、設備配置、災害、人流、ロボット動作を事前に試します。NVIDIAもOmniverseをフィジカルAI向け開発基盤として打ち出しています。
フィジカルAIとは、ロボットや自動運転車のように現実世界で動くAIです。実機で全条件を試すには費用と危険が伴うため、仮想環境で学習・検証する需要が生まれます。経済産業省の2026年資料でも、フィジカルAIと産業デジタルツインの導入が政策課題に挙がりました。
撤退と事業改称が映す国内メタバース株の現在地

国内の関連企業を見ると、メタバース市場が単に成長を続けているとは言えません。大型サービスを終了した企業、事業名からメタバースを外した企業、AIとの融合へ軸足を移した企業が並びます。これはテーマ消滅というより、収益を生む部分だけを残す選別です。
関連銘柄を選ぶ際は、「参入した」「サービスを開発した」といった過去の発表だけでは足りません。現在のセグメント売上、営業利益、継続利用、受注額まで追う必要があります。まず、ブーム期に注目された4社が何を変えたのか確認します。
カバーはホロアースを終了し約32億円を減損した
カバーは2026年5月14日、メタバースプロジェクト「ホロアース」のサービス終了を発表しました。現行サービスの終了と収益計画の見直しに伴い、ソフトウェア資産約32億円を減損しています。大型仮想空間の収益化が難しい実例です。
一方、26年3月期の全社売上高は前期比13.7%増の493.3億円でした。VTuberのライブ、物販、ライセンスは伸びています。バーチャルIPは成長しても、メタバース基盤が同じように稼げるとは限りません。
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グリーは「メタバース事業」を「VTuber事業」へ改称した
グリーホールディングスは26年6月期から、従来のメタバース事業をVTuber事業へ改称しました。名称変更だけで事業区分への影響はありませんが、収益の中心がREALITYを軸とするアバター配信とVTuber運営だと明確になりました。
26年6月期3Q累計のVTuber事業は売上高66.86億円、営業利益8.92億円です。前年同期比では売上が7.9%増、利益は60.6%増でした。国内上場企業の中では、仮想アバター経済圏をセグメント利益まで追える数少ない例です。
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monoAI technologyは3期連続赤字からXR×AIへ転換する
monoAI technologyは、メタバース専業に近い立場で上場した企業です。しかし25年12月期は売上高9.80億円と前期比31.4%減り、営業損失は3.90億円へ拡大しました。3期連続で営業・経常・最終赤字となり、継続企業に関する重要事象も記載されています。
現在は「メタバース特化型」からXR×AIへ移行し、AIエージェントを使った業務支援を新しい収益源に据えています。26年は転換投資の年、27年の通期黒字化を目標としていますが、まず売上減少を止められるかが先です。
カヤックの足元の増益を支えるのはメタバースではなくゲーム事業だ
カヤックはKDDIの「αU metaverse」開発などで注目されました。ただし、公式サイトのメタバース関連ニュースは2023年の案件が中心です。26年12月期1Qの売上高は前年同期比11.4%増の52.0億円、営業利益は36.5%増の3.4億円でした。
増益を牽引したのは、主にハイパーカジュアルゲームです。メタバース開発の知見は残っていても、全社業績を説明する主役ではありません。関連テーマ一覧に名前があるだけで、メタバース需要による増益だと解釈するのは危険です。
ブーム後も事業を追えるメタバース関連の注目株4社

ここからは、2026年時点でも関連事業を公式資料で確認できる4社を見ていきます。純粋なメタバース企業だけを選んだわけではありません。消費者向け仮想空間、空間認識、XR制作、産業デジタルツインという異なる位置から候補を選びました。
4社はリスクも違います。グリーは対象事業の利益を開示し、Kudanは売上を伸ばす一方で赤字です。ソニーとTOPPANは財務基盤が大きい反面、関連事業の全社寄与が見えにくい銘柄です。投資対象として同列には扱えません。
グリーホールディングス|REALITYを含むVTuber事業が黒字成長
グリーの強みは、REALITYを含むVTuber事業の売上と営業利益を四半期ごとに確認できる点です。アバターで交流し、配信やギフトで課金する経済圏は、単発のバーチャル展示会より継続収入を作りやすいモデルです。
注意点は、全社ではゲーム事業の減収や投資事業の損失が重い点です。26年6月期3Q累計の連結売上高は前年同期比10.9%減、営業利益は34.7%減でした。VTuber事業が伸びても、他部門の悪化を埋め切れるとは限りません。
Kudan|デジタルツインとロボット向け空間認識を展開
Kudanは、機械が自分の位置と周囲の形を把握する空間認識技術を持ちます。用途はデジタルツイン、設備管理、インフラ点検、移動ロボットです。娯楽型メタバースより、フィジカルAIの成長に連動しやすい企業です。
26年3月期の売上高は前期比131.3%増の11.96億円まで伸びましたが、営業損失は5.85億円でした。27年3月期は売上高13.9%減の10.30億円、営業損失3.40億円を見込みます。成長率だけでなく赤字縮小を同時に見る銘柄です。
ソニーグループ|ゲーム・XR機器・3D制作技術を横断
ソニーはPlayStation、映像・音楽IP、イメージセンサー、XR機器をグループ内に持ちます。3D制作ブランド「XYN」では、空間キャプチャーやモーション制作を展開しています。仮想空間を利用する側と作る側の両方へ接点があります。
ただし、メタバース専業株ではありません。27年3月期1Qの営業利益は前年同期比40.2%増の4,765億円でしたが、主な牽引役はゲームとイメージセンサーです。XR事業単独の売上や利益が開示されていないため、テーマ純度は低めです。
TOPPANホールディングス|防災・建設・ロボット管理へ3D空間を実装
TOPPANは、3D都市モデルに災害データや住民情報を重ねる防災サービスを提供しています。建設向け空間シミュレーションや、複数ロボットを3次元空間で管理する「TransBots」も展開しました。法人需要へつながる用途です。
26年3月期の連結売上高は前期比5.0%増の1兆8,050億円、営業利益は21.1%減の671億円でした。デジタルツイン関連の売上は独立開示されていません。技術の実装例は多いものの、業績への寄与を測りにくい点が弱みです。
メタバース株は事業の稼ぎ方で評価の物差しが変わる

メタバース株は、過去高値から大きく下げた銘柄が多く、「安くなった」と感じやすいテーマです。しかし、株価が下がった理由が期待の剥落や赤字継続なら、過去高値との比較に意味はありません。現在の時価総額と利益、資産、成長率を組み合わせて見ます。
以下は2026年8月3日終値を基準とした概算です。株価指標は決算発表や株価変動で変わります。特に赤字企業へPERを当てはめず、PSRは時価総額が売上高の何倍か、PBRは株価が1株純資産の何倍かを示す指標として使います。
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| 銘柄 | 株価 | 時価総額 | PER | PBR | 配当利回り |
|---|---|---|---|---|---|
| グリーHD | 395円前後 | 約710億円 | 会社予想非開示 | 約0.76倍 | 約5.4% |
| Kudan | 1,600円台 | 約185億円 | 赤字で算出不能 | 約7倍 | 0% |
| ソニーG | 3,500円台 | 約21兆円 | 17〜21倍程度 | 約2.6倍 | 1%弱 |
| TOPPAN HD | 4,400円台 | 約1.3兆円 | 20倍前後 | 約1倍 | 約1.3% |
グリーはPBR1倍割れでも業績予想非開示を割り引く必要がある
グリー株はメタバース期待が高まった2021年前後から長期調整を経て、2026年は300円台後半から400円台前半が中心です。8月3日時点のPBRは約0.76倍で、株価は1株純資産を下回ります。配当利回りも5%台です。
ただし、通期業績予想が非開示のため、会社予想PERで割安さを確認できません。ゲーム事業の縮小や投資損失もあります。低PBRだけを買い材料にせず、VTuber事業の利益成長が全社利益へ反映されるかを確認したい局面です。
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Kudanは赤字のためPERではなく売上成長率とPBRで見る
Kudan株は2026年1月の1,223円から5月に3,140円まで上昇した後、8月初めは1,600円台へ調整しました。フィジカルAI期待で短期間に上がりやすい反面、材料後の値幅も大きい銘柄です。営業赤字のためPERは使えません。
PBRは約7倍、PSRは15倍台です。すでに高い技術期待が時価総額へ入っています。売上が伸びるだけでは足りず、高粗利ソフトウェアへの転換と赤字縮小を同時に達成する必要があります。
ソニーとTOPPANは割高感を抑えやすい一方でテーマの寄与が薄い
ソニー株は2026年8月初めに3,500円台で、52週では3,043〜4,776円の範囲です。PERは算出元により17〜21倍程度、PBRは約2.6倍でした。XRより、ゲーム、音楽、映画、イメージセンサーの利益が評価を左右します。
TOPPAN株は同時期に4,400円台で、52週レンジは3,666〜5,928円です。PERは20倍前後、PBRは約1倍でした。両社とも赤字新興株より指標を読みやすい一方、メタバース需要だけで株価が大きく動く銘柄ではありません。
monoAIとカバーの株価は事業転換の成否を先回りしやすい
monoAI株は2023年3月の上場来高値2,390円から、2026年6月に113円まで下落しました。8月初めは200円前後ですが、最高値からの下落率だけで割安とは言えません。営業赤字でPERは算出できず、PBRは3倍前後です。
カバー株はホロアース終了後も、VTuber事業の利益でPERを計算できます。8月4日時点でPER約20倍、PBR約4.8倍でした。メタバース撤退は悪材料でも、開発費負担が減れば本業評価にはプラスとなり得ます。両社は同じ撤退局面ではありません。
次の値動きは売上・黒字化・事業開示の3点で判断する

テーマ株の先行きを一つの目標株価へ置き換えると、事業の差が消えてしまいます。ここでは強気・中立・弱気の価格帯ではなく、決算後に評価が上向く条件と、前提が崩れる条件を銘柄別に整理します。
確認順は、関連事業の売上、黒字化、開示の細かさです。売上が増えても赤字が膨らめば株主価値は残りにくく、好調でもテーマ事業の比率が分からなければ株価材料になりません。企業ごとに順を追い、次回決算で確認できる数字へ落とし込みます。
グリーは8月7日決算でVTuber事業の増収率と利益率を確認する
グリーは2026年8月7日に26年6月期通期決算を発表する予定です。注目点は、VTuber事業の売上成長が続くか、営業利益率が3Q累計の約13%から維持・改善するかです。REALITYのグローバル展開が利益を伴えば評価は上向きます。
反対に、利用拡大へ向けた費用が先行し、利益率が大きく低下する場合は注意が必要です。ゲーム事業の減収も続けば、VTuberの成長が全社利益へ届きません。通期予想の再開や配当方針も、低PBR評価を変える材料になります。
Kudanはソフトウェア売上の拡大と営業赤字の縮小が分岐点になる
Kudanの次回決算は2026年8月13日の予定です。27年3月期はハードウェア売上を減らし、高粗利ソフトウェアへ集中する計画です。売上高が減っても粗利率が改善し、営業損失が会社計画の3.40億円へ向けて縮小すれば戦略を評価できます。
一方、研究開発費と人件費を吸収できず赤字が長引けば、高いPBRとPSRを支えにくくなります。発行済株式数は増加傾向も確認が必要です。大型受注だけでなく、継続課金型のソフトウェア収入と追加資金調達の有無を見ます。
monoAIはXR×AIの受注と2027年の黒字化計画を検証する
monoAIは2026年8月14日に2Q決算を発表する予定です。XR CLOUDの既存案件に加え、AIエージェント基盤を使った業務支援が売上へ乗るかが焦点です。まず前年同期比の大幅減収を止め、四半期売上を回復させる必要があります。
会社は26年4Qの四半期黒字化と27年の通期黒字化を目標としています。営業キャッシュフローの赤字が続く中、計画延期や追加増資があれば株価の前提は崩れます。新規案件数ではなく、売上総利益と現預金残高まで確認したい銘柄です。
ソニーとTOPPANはXR・デジタルツインの売上開示が再評価条件になる
ソニーとTOPPANは、関連サービスの実在だけでは株価評価を変えにくい規模です。ソニーならXYNやXR機器の販売実績、TOPPANなら防災・建設向けデジタルツインの受注額や導入自治体数が開示されれば、テーマ寄与を測りやすくなります。
開示がない間は、ソニーをゲーム・IP・センサー株、TOPPANを印刷・半導体・DX株として評価するのが基本です。関連技術を持つだけで「本命」と呼ぶのは早計でしょう。既存事業の利益に新分野の売上が上乗せされる段階を待ちます。
まとめ|メタバース銘柄は仮想空間より収益化の実態で選ぶ
メタバースという投資テーマは、2021年前後のような一括物色の段階を終えました。しかし、ゲーム・UGC、空間コンピューティング、スマートグラス、産業デジタルツインへ分かれ、3D技術そのものは残っています。
国内株では、グリーのVTuber事業が黒字成長を示す一方、カバーはホロアースを終了しました。KudanはフィジカルAIへ近いものの赤字で、ソニーとTOPPANはテーマ事業の利益寄与がまだ見えません。
銘柄選びでは、メタバースという呼び名より、売上・利益・継続課金・受注の開示を優先すべきです。過去の参入発表や高値を根拠にせず、次回決算で確認できる数字から判断してください。
現時点では、関連事業を黒字で追えるグリー、成長余地と赤字リスクが並ぶKudan、分散型のソニーとTOPPANでは投資スタンスが異なります。同じテーマ名でまとめず、各社の収益構造に合わせて見る姿勢が欠かせません。

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