株式投資において、価格が下落したタイミングを狙って買いを入れる手法は「押し目買い」と呼ばれ、王道戦略の1つとされます。
しかし、「株価が下がってきたからチャンスだ!」と買いを入れた結果、そこからさらに下落してしまったという失敗経験がある方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、押し目買いが難しいという方に向けて、成功のためのポイントをプロがわかりやすく解説します。
株式投資の押し目買いとは?基本をわかりやすく解説

押し目買いとは、上昇トレンドが続いている銘柄に、一時的な価格の調整(下落)を利用して新規に買いを入れる投資手法です。
株価は通常、一直線に上がるのではなく「上昇 → 調整 → 再上昇」を繰り返します。
この調整局面こそが押し目です。
業績やテーマ性を裏付けとして継続的に資金が流入している場合、この調整は下落ではなく、再上昇に向けたエネルギーを溜める時間と捉えられます。
押し目買いのメリットとは?
押し目買いは、すでに存在する上昇トレンドに逆らわないため、勝率が高くなりやすいです。
また、一時的に下落したタイミングを狙えば、リスク(損切り幅)に対するリターン(利益幅)の比率が高く、損小利大の取引を実現しやすいです。
押し目を拾えるかどうかで、同じ銘柄でも利益率が2倍以上変わる場合も珍しくありません。
このように、押し目買いを狙うと、高値掴みを避けて、上昇波に乗りながら、低リスクでエントリーできます。
プロも常に押し目を狙っていますし、初心者にとってもおすすめできる投資手法です。
押し目買いの反対「戻り売り」とは?
押し目買いの逆が「戻り売り」です。
これは下降トレンド中の一時的な戻り(反発)を利用して空売りを仕掛ける戦略です。
下降相場では「戻り」と呼ばれる反発局面が見られます。
これは、空売りを入れていた人による利益確定を目的とした買い戻しや、割安感からの一時的な買いによって発生しますが、再び売りに押されがちです。
その戻りのタイミングを狙って空売りを入れて、次の下落波による利益を狙うのです。
押し目買いが有効な銘柄・相場環境とは?

押し目買いはどの銘柄でも有効というわけではありません。
押し目だと思って買いを入れたとしても、銘柄が下落し続けてしまっては利益になりませんから、押しを作りながら上昇する銘柄を選ぶ必要があります。
そこで、押し目買いが成功しやすいのはどのような銘柄や相場環境かをテクニカルアナリストが解説します。
押し目買いで利益を狙いやすい銘柄とは?
まず、高値安値をともに切り上げ続けるという、 明確な上昇トレンドを維持していることが重要です。
高値を更新できずに失速している銘柄や前回安値を下回る水準まで下落している銘柄は、上昇トレンドが崩れかけている可能性があるため注意が必要です。
また、業績の裏付けも重要です。
具体的には、増収増益や上方修正、受注高の増加などで業績の好調さが明らかになっている銘柄を選ぶのが良いでしょう。
さらに、外部環境が追い風になっている銘柄にも買いが続きやすいです。
たとえば、半導体製造装置やインバウンド、生成AI関連、再生可能エネルギーなど、需要増加が見込まれる分野に関連した事業を行っている銘柄が有望でしょう。
他にも、足元の為替のトレンドが業績にプラスに働く銘柄や、政府の政策が支えになっている銘柄に注目したいです。
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押し目が機能しにくい銘柄とは?
逆に、25日移動平均線や75日移動平均線を株価が割り込んでいる銘柄には注意が必要です。
こうした節目の線の回復がなかなか見られずに、リバウンドしても値動きが限定的であれば、下降トレンドに転じている可能性が懸念されます。
出来高が減少し続けている場合にも、買い意欲が低下している可能性があります。
ファンダメンタル面では、業績悪化や悪材料による下落である場合には、値崩れの可能性に注意が必要です。
相場全体が崩れた場合のリスク
相場全体の動向にも注意を払いたいです。
相場全体が下落トレンドに入ると、指数連動型ファンドが機械的な売りを出したり、外国人投資家による処分売りを出したりして、優良株からも資金が流出してしまうケースがあります。
TOPIXが75日線を割り込み下降トレンドに転じている場面では、相場全体が下落トレンドに入っている可能性があるため、キャッシュ比率を上げて下げ止まりを見極めるのが得策でしょう。
VIX指数が急騰したり、米国金利が急上昇したりと、世界的に金融市場が荒れ模様となっている場合にも、無理に買いを狙わずに落ち着きを待ちたいです。
押し目買いの判断基準とコツをプロが解説

押し目買いを入れる場合に、私は①移動平均線、②ローソク足、③出来高の3つを重視しています。
判断基準①|移動平均線

移動平均線とは、一定期間の株価の終値を平均した線です。
私は、保有期間が2週間~3か月程度のスイングトレードであれば、25・75・200日線を見るようにしています。
上昇トレンドを形成している銘柄が、こうした移動平均線付近まで下落した場面は押し目買いのチャンスです。
株価が移動平均線に接近、もしくは少し割り込んでいる程度のタイミングを狙ってみましょう。
25日線は短期投資に効果的で、75日線は中期、200日線は長期寄りの判断基準となります。
短期目線で利益を狙いたい場合には、25日線近辺までの浅い押しを、長期でじっくり銘柄を持ちたい場合には200日線近辺までの深い押しを狙うと考えるのが良いでしょう。
ただし、25日線を狙って押し目買いを入れたとしても、続落して75、200日線まで下落してしまう場合ももちろんあります。
そうしたリスクも考慮して、ロスカットルールを決めておく必要があります。
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判断基準②|ローソク足
ローソク足の分析によって、上昇する可能性が高い銘柄を見つけられます。
特に私が注目するのは「寄り引け同時線」「十字線」と言われるローソク足や、下髭の長いローソク足です。
▼十字線は、始値と終値が同じ価格であったことを示しています。

取引に参加した投資家が、買いなのか、売りなのかを迷っているときに頻出するローソク足です。
私は、この次に出るローソク足に注目します。
十字線が出た翌営業日に株価が上昇した場合、迷っていた投資家が一気に買い方向に傾き、上昇に弾みがつきやすいです。
▼また、下髭の長いローソク足は、取引時間中に大きく売られた後、買い戻しが集まって引けたことを示しています。

「ここが押し目」だと思った投資家による買いが入ったと考えられ、翌日以降も同価格帯が下げ止まりの目安として意識されやすいです。
十字線や下髭の長いローソク足に注目して、押し目買いのポイントを探ると、成功しやすいと思います。
判断基準③|出来高
出来高は売買代金、取引回数とも言い換えられ、どれくらい売買が行われたかを示します。
一般的に、売買を伴ったチャート上のシグナルの方が信頼度が高いと考えられます。
そのため、移動平均線やローソク足を確認した上で、出来高の増減を確認するのが良いでしょう。
たとえば、下髭が長いローソク足や十字線を付けた後の株価上昇などで下げ止まりが確認でき、さらに出来高を伴っていれば、そのシグナルの信頼性は高いと言えます。
押し目買いタイミングの見極め方を実例で解説
ここからは私が過去に押し目買いを推奨した銘柄とその時の判断の根拠を紹介します。
是非売買判断の参考にしてみてください。
KOKUSAI ELECTRIC(6525)

9月18日に大きく出来高を伴った陽線が出たため、明確な上昇トレンドに入ったと判断し、監視していた銘柄です。
なるべく25日線に引き付けて、10月15日に買いを推奨しています。
結果として直近の安値近辺で買い付けられて、翌日以降は買い値を割り込まずに大きく株価が上昇しました。
タツモ(6266)

9月16日に出来高を伴った陽線が出たため、上昇トレンドへの転換を意識して買いを推奨した銘柄です。
9月19日には大きな下髭が出ており、下値での買い意欲の旺盛さが確認できました。
その後、5日移動平均線になるべく接近したタイミングを狙って、9月20日に買いを推奨しています。
ローソク足の動きから、買い意欲が強そうだと判断し、浅い押しを狙って買いを入れたことで、短期的な上昇に乗れました。
高配当株の押し目買い、いつ狙えばいい?

高配当株投資において、押し目買いは、利回りを高める有効な戦略です。
では、どのようなタイミングを押し目と考えて、買いを狙うのが良いでしょうか?
もっとも分かりやすいのは、配当の権利落ち日です。
この日は、配当を受け取る権利がなくなるため、株価が理論上、配当額相当分だけ下落します。
次の権利付き日に向けて再度株価が上昇しやすいため、権利落ち日は良い押し目買いのチャンスになります。
また、市場全体に巻き込まれて売られたタイミングも狙い目です。
例えば、日経平均株価やTOPIXが大きく下落した際に、企業の本質的な収益力や安定配当能力には影響がないにもかかわらず株価が下落した場合です。
企業の収益の根幹に関わらない一時的な不祥事や短期的な業績下方修正などによる株価の急落も、将来の回復を見越した買い場となり得ます。
さらに、移動平均線やローソク足、出来高なども確認し、買いタイミングを狙うのが良いでしょう。
押し目買いがうまくいかない人必見!失敗しないコツ

押し目買いは成功確率が高い手法ですが、一歩間違えると単なる「下落の途中」で買ってしまい、大きな含み損を抱えてしまいます。
そこで、ここからは押し目買いで失敗しないためのコツを解説します。
買う前に「上昇トレンド継続」を確認する
押し目買いで損失を出してしまう方の多くは、そもそもその銘柄が上昇トレンドではないという根本的な間違いを犯しています。
トレンドの正しい見極めが、成功への第一歩となります。
トレンドの見誤りポイント
まず多い失敗として、安値を切り下げ始めている銘柄を「押し目」だと勘違いするケースが挙げられます。
本来、上昇トレンドには「高値を切り上げ」「安値も切り上げる」という2つの条件が必須です。
安値が切り下がった時点で、それは押し目ではなく下降トレンド入りしている可能性があります。
次に、移動平均線の傾きに逆らっていないかを確認してください。
25日線などが横ばいになっている場合は上昇トレンドの勢いが弱いと考えられ、下降している場合は下降トレンド入りが懸念されます。
押し目買いは、あくまで右肩上がりの相場限定の戦略です。
さらに、テーマや材料が終わっている銘柄にも要注意です。
業績の悪化、政策支援の終了、競合の台頭、あるいは過熱感からの資金抜けなどが起きた銘柄は、下落したとしてもそれは押し目ではありません。
根本的な買い材料が無くなっていないかを必ずチェックしてください。
ロスカットラインを明確にしよう
押し目買いは勝率が高い手法ですが、損切りラインを設定しなければ、一度失敗した際に損失が一気に膨らんでしまいます。
そのため押し目買いに入る際には、押し目ラインを明確にした上で、そのライン割れで機械的に損切りする必要があります。
たとえば、25日線で押し目を狙ったのであれば、株価がその25日線を明確に実体で割り込んだら撤退します。
直近の安値で狙った場合は、その安値を割れたら下落トレンド入りと見なし、すぐに撤退します。
損切りを徹底すれば、下落トレンドに巻き込まれずに利益を狙えます。
もっともやってはいけないのは、もう少し待てば戻りそうだから損切りを延長する、あるいはナンピン(難平)買いをして平均取得価格を下げようとする判断です。
これは押し目買いの理論を破壊する行為であり、初心者が特に陥りやすい失敗です。
決めたロスカットラインは絶対に動かさないようにしましょう。
分割エントリーや逆指値注文の活用
押し目買いといっても、株価の完璧な底で買いに入る必要はありません。
買いのタイミングを分散させたり、反発を確認してから買ったりすることで、リスクを大きく限定できます。
押し目の候補となるラインは1つではないため、分割してのエントリーによって精度が上がります。
例えば、資金の25%を5日線タッチで、50%を25日線タッチで、残り25%を下髭が出たタイミングで追加するなど、複数の段階に分けて買う方法が有効です。
これだけでリスクは大幅に減少します。
より安全なのは、反発を確認した後に買う逆指値買いの活用です。
株価は少し高くなりますが、その分「ダマシ」にあう可能性が低下します。
例えば、25日線で下げ止まったのを確認した後、前日の高値を超えたら買うという注文を入れておけば、本当に上昇に転じてからエントリーできます。
「押し目買いに押し目なし」と言われる理由
株式相場には「押し目待ちに押し目なし」という有名な格言があります。
本当に強い銘柄は調整が浅く、「待っていたら買えずに上がってしまった」経験を多くの方がされています。
これは、強いトレンドのときは押し目が浅くなるためです。
この問題への私の答えは2つあります。
1つは、浅い押しも押し目として積極的に拾うことです。
「5日線タッチも押し目」と認識するだけで、エントリーの機会は増えます。
もう1つは、買い逃しを恐れず、次の調整を待つことです。
買えなかった相場に無理に飛びついて高値掴みをすると、かえって負けやすくなります。
強い銘柄であっても、必ずどこかで調整を挟む機会が訪れます。
「買い逃し=負け」ではありません。
「無理な高値掴み=負け」と考え、焦らず冷静に次のチャンスを待つ姿勢が大切です。
まとめ|押し目買いでは上昇トレンドの見極めが必須

押し目買いは、株式投資において最も成功確率が高い戦略の1つですが、それは上昇トレンドの正しい見極めが大前提となります。
結局のところ、押し目買いで成功するには、トレンドを正しく把握し、機械的なルールを守り抜く必要があります。
感情に流されず、上昇トレンドの定義(高値・安値の切り上げ)や移動平均線の向きを厳しくチェックしてください。
そして、エントリーの際は分割や逆指値でリスクを管理し、失敗した場合はロスカットラインを厳守すれば、リスクを限定しながら着実に利益を積み重ねられます。
この記事を参考に、ご自身のトレードを見直す際のチェックリストとしてご活用ください
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執筆者情報
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。
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