アドバンテスト(6857)の株価は、2026年7月29日の決算発表前に付けた25,200円から、8月5日には33,720円まで反発しました。わずか5営業日で33.8%上昇した背景には、推論AI向け半導体の検査需要と通期予想の大幅な上方修正があります。
ただし、予想PERは37倍台です。業績の強さだけでなく、現在の株価がどこまで成長を織り込んだ水準なのか、次の上昇に必要な条件は何かを最新決算と株価データから整理します。
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アドバンテストはAI半導体の複雑化で稼ぐ検査装置首位企業

アドバンテストは、完成した半導体が設計通りに動くかを調べるテストシステムの大手です。AI半導体の性能が上がるほど、検査項目は増え、1個当たりのテスト時間も長くなります。単純な半導体出荷数だけでは、同社の成長を説明できません。
AI半導体の複雑化そのものが、検査装置の利用量を押し上げる収益構造です。この仕組みが同社の強みです。テスターの役割、市場シェア、海外売上比率を見れば、株価がAI投資へ強く反応する理由が分かります。
半導体テスターは量産前の不良を見つける最終関門
半導体テスターは、製造工程の終盤で電気信号を与え、演算速度や消費電力、発熱、接続状態を検査します。不良品をサーバーへ組み込む前に除外する役割があり、歩留まりと出荷品質の両方を左右します。
アドバンテストは、演算用のSoCとメモリーの双方へ装置を供給しています。SoCはCPUやGPUなど複数の機能を1個へまとめた半導体です。AI向けでは高速通信や大電力への対応が増え、従来品より検査の難度が大きく上がります。
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SoCテスターシェア66%、HPC分野では70%超を視野
会社説明では、2025年1〜12月のSoCテスター市場で同社シェアは推定66%でした。HPC向けに限れば、70%を上回る水準を視野に入れています。HPCは大規模な演算を高速で処理する高性能コンピューティングです。
顧客が新しいAIチップを設計する段階から検査条件を共同開発するため、量産開始後に装置を切り替える負担は小さくありません。高いシェアは価格競争力だけでなく、次世代品の開発情報へ早く接近できる優位性も生みます。
26年4〜6月期の海外売上比率99.1%で為替感応度も高い
26年4〜6月期の海外売上比率は99.1%でした。顧客の中心は台湾、韓国、米国などの半導体メーカーや設計企業です。世界のAI設備投資が伸びれば受注機会が広がる半面、地政学や輸出規制の影響も受けます。
同期間の平均為替レートは1ドル159円、1ユーロ185円でした。会社は7月以降を1ドル150円、1ユーロ170円で想定しています。円高は円換算売上の下押し要因になり、想定より円安なら業績の上振れ余地が生じます。
27年3月期1Qは売上3,675億円・営業利益1,900億円の最高益発進

2026年7月29日に発表した27年3月期1Qは、売上高と営業利益が四半期として過去最高を更新しました。AI向けSoCと高性能DRAMの検査需要が想定を超え、生産能力の増強が売上へ結び付いています。
決算の核心は増収率以上に、営業利益率が50%を超えた収益力です。売上の伸びだけでなく、採算も改善しています。一方、投資有価証券の評価益も純利益を押し上げました。本業の利益と一時的な金融収益は分けて見るべきです。
売上39.3%増、営業利益53.3%増で利益率は51.7%
1Qは売上高3,674.7億円、営業利益1,899.9億円と増収増益でした。営業利益率は51.7%へ上昇しています。
高性能テスターの構成比上昇と工場稼働率の改善が採算を押し上げました。ただし、部材費や在庫評価の反動があり、1Qの利益率は年間へ単純に延ばせません。
| 指標 | 26年3月期1Q | 27年3月期1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,638億円 | 3,675億円 | +39.3% |
| 売上総利益 | 1,716億円 | 2,556億円 | +48.9% |
| 営業利益 | 1,240億円 | 1,900億円 | +53.3% |
| 営業利益率 | 47.0% | 51.7% | +4.7pt |
テストシステム事業が売上3,336億円を稼いだ
主力のテストシステム事業は、売上高が前年同期比38.7%増の3,336億円、セグメント利益が50.3%増の1,907億円でした。全社売上の約91%を占め、AI半導体向け装置が業績をほぼ決めています。
サービス・その他事業も、売上高339億円、セグメント利益86億円までさらに大きく伸びました。納入済み装置の保守や消耗品は、設置台数が増えるほど積み上がります。装置販売後も収益が続く点は業績変動を和らげます。
純利益を押し上げた447億円の金融収益は本業利益と分けて見る
税引前利益は前年同期比92.9%増の2,340.8億円、親会社株主に帰属する純利益は93.8%増の1,747.8億円でした。営業利益より伸び率が高いのは、金融収益447億円が計上されたためです。
なお、金融収益の中心は戦略的投資の評価益であり、テスター販売から毎期得られる利益ではありません。純利益だけで成長率を判断すると、本業の実力を過大評価します。継続性を見る際は営業利益を分析の軸に置くのが妥当です。
通期営業利益予想を6,275億円から8,460億円へ上方修正
通期予想は売上高1兆7,140億円、営業利益8,460億円、純利益6,600億円へ引き上げられました。わずか3カ月で通期予想を再び引き上げた点が、決算後の株価反発を呼んだ最大の材料です。
| 指標 | 4月時点予想 | 7月修正予想 | 修正額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆4,200億円 | 1兆7,140億円 | +2,940億円 |
| 営業利益 | 6,275億円 | 8,460億円 | +2,185億円 |
| 営業利益率 | 44.2% | 49.4% | +5.2pt |
| 純利益 | 4,655億円 | 6,600億円 | +1,945億円 |
| 基本的EPS | 641.61円 | 911.64円 | +270.03円 |
推論AI・HBM・先端パッケージがテスト時間と挿入回数を伸ばす

AI半導体市場の追い風は、GPUの出荷増だけではありません。実際のサービスでAIを動かす推論処理が拡大し、用途別ASICやCPUの需要も強まっています。さらに、複数の半導体を組み合わせる先端パッケージでは、工程ごとに検査が必要です。
半導体の個数に加え、1個を検査する時間と検査を行う回数が増えています。顧客の設備投資計画も長期化しています。この変化が市場拡大率を上回るテスター需要を生み、同社の生産能力増強を急がせています。
推論AI向けASICとCPUがGPUに続く需要の柱になる
ASICは特定の処理へ特化して設計する半導体です。クラウド各社は推論処理の電力効率と費用を改善するため、自社仕様のAIチップを増やしています。会社は、用途別ASICの需要が将来GPUと同等以上になる可能性を示しました。
CPUもAIサーバー全体の制御やデータ処理を担うため、GPUの脇役ではありません。推論サービスが利用者へ広がるほど、種類の異なる演算半導体が必要です。会社はSoCテスター売上予想を9,995億円から1兆2,435億円へ上方修正し、生産能力の増強を加速しています(決算説明会資料14ページ)。
HBMと高性能DRAMがメモリーテスター需要を支える
HBMは複数のDRAMを縦に積み、高速で大量のデータを送るメモリーです。AIアクセラレーターの性能を引き出す部品であり、積層数や通信速度が上がるほど検査項目も増えます。高性能DRAM向け需要は1Qの増収を支えました。
ただし、メモリーテスターのシェアは短期的に低下する可能性があります。NAND向けで既存顧客への食い込みが弱く、製品切り替え期にもあるためです。新製品でシェアを取り戻せるかは、今後の受注に表れます。
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2026年のテスター市場予想は130億〜145億ドルへ拡大
会社は2026年のテスター市場予想を130億〜145億ドルへ引き上げました。推論AI向けASIC、CPU、DRAMが成長を牽引します。市場金額には値上がりも含まれるため、数量増とは分けて見ます。
| 市場規模 | 2024年 | 2025年 | 2026年4月予想 | 2026年7月予想 |
|---|---|---|---|---|
| テスター市場全体 | 60億ドル | 90億ドル | 109億〜122億ドル | 130億〜145億ドル |
| SoCテスター | 41億ドル | 69億ドル | 87億〜95億ドル | 105億〜115億ドル |
| メモリーテスター | 19億ドル | 21億ドル | 22億〜27億ドル | 25億〜30億ドル |
SoCテスター年産1万台と需要の18カ月可視化が成長を支える
同社は27年3月末までにSoCテスターの年産能力を段階的に5,000台以上へ増やし、2028年末から2029年初めに1万台を目指します。構成差を調整すると、1万台は2020年時点の約2万台分に相当します。
顧客や供給網と先の需要を見通せる期間も、従来の約6カ月から18カ月へ延びました。先端半導体の製造枠やパッケージ工程が不足し、早期の設備計画が必要になったためです。先まで需要を見通せれば、過剰な生産投資を避けやすくなります。
5年で12倍、PER37倍の株価は安さより利益成長を織り込む

アドバンテストの株価は、2021年末の2,725円から2026年8月5日の33,720円まで約12.4倍になりました。途中には半導体景気の悪化による下落もありましたが、2023年以降はAIサーバー投資を追う形で上昇が加速しています。
編集部では、AI半導体関連の中でも業績の裏付けが特に強い銘柄と評価しています。ただし、今の株価は来期以降もAI向け需要が伸びる前提まで織り込んだ水準です。割安株ではなく、今後も高い増益が続くと見られている銘柄です。

2022年の調整を経て2023年からAI相場が加速
分割調整後の年末株価は、2021年が2,725円、2022年が2,120円でした。2022年は高値2,845円から安値1,650円まで下落しています。半導体需要の循環悪化が、高い成長期待をいったん剥がしました。
その後は2023年末4,797円、2024年末9,198円、2025年末19,635円と上昇しました。AI用GPUとHBMの増産が検査需要へ波及し、株価は3年続けてほぼ倍増する勢いを示しています。
同社は2023年10月1日付で1株を4株へ分割しました。本記事の過去株価は、比較条件をそろえるため分割後の基準へ調整しています。
決算前25,200円から33,720円へ上昇し年初来高値へ接近
2026年の株価は3月31日に年初来安値19,720円を付け、6月25日には35,940円まで上昇しました。半導体株全体の調整と4月の会社予想への失望で振れながらも、長期の上昇基調は維持しています。
7月29日終値は25,200円でしたが、翌日の終値は27,935円、8月5日には33,720円となりました。年初来高値まで約6.2%の水準です。出来高を伴う急反発は上方修正への評価を示す一方、短期的な過熱も招きます。
時価総額24兆円台・PBR23倍台では業績上振れの継続が必要
8月5日終値を基準にすると、会社予想EPS911.64円に対するPERは37.01倍です。実績PBRは23.41倍、時価総額は自己株式を除く株数で概算して約24.4兆円となります。
27年3月期の配当予想は未定であり、予想配当利回りは算出できません。利益が急増しているためPERは以前より低下しましたが、資産価値に対する評価は今もなお、かなりの高水準です。現在値を支えるには、次年度以降の増益も必要です。
証券会社の目標株価は更新時点や利益前提が異なるため、本稿の評価軸には採用しません。
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営業利益率・1万台体制・10月の指数需給が次の株価を左右する

編集部は、中長期では株価が下がったところを少しずつ買う余地がある一方、短期的な高値追いは避けたいと見ています。推論AIとHBM向け検査需要は強い半面、高い評価倍率が悪材料への反応を増幅し、株価の振れを大きくします。
ここから一段高へ進むには、会社計画を上回る利益率と強い受注環境を次回決算でも示す必要があります。需要鈍化やコスト増が表面化すればPER調整が起こりやすく、10月には日経平均の指数需給も加わります。
51.7%の営業利益率を保てるかが次回決算の注目点
1Qの営業利益率は過去最高水準でしたが、会社は同じ採算が年間を通じて続くとは見ていません。1Qには在庫評価損の戻りもあり、今後はDRAMを含む部材価格の上昇が製造原価を押し上げる可能性があります。
利益率を左右するのは、値上げや製品構成の改善でコスト増を吸収できるかです。売上が計画を上回っても、利益率が急低下すればEPSの上振れ幅は縮みます。次回決算では、受注額より粗利率と営業利益率の動きを重く見たいところです。
部材価格上昇を吸収しながら年産1万台へ進めるか
増産には工場だけでなく、電源や計測部品、委託生産先の確保が必要です。同社は東南アジアでEMSの第2拠点を使い、主要部品では長期契約も進めています。EMSは外部企業へ製造を委託する仕組みです。
需要が供給能力を超えれば、販売機会を失うだけでなく納期も長期化します。反対に需要が急減すれば、増産投資が重い固定費負担へ変わります。5,000台体制への移行時期と、1万台へ向けた追加投資が利益を圧迫しないかが重要です。
日経平均キャップ調整比率0.9から0.8への変更に注意
日本経済新聞社は、アドバンテストの日経平均でのウエートが10%の上限を超えたため、2026年10月1日にキャップ調整比率を0.9から0.8へ下げます。指数計算に使う調整済み株価換算係数は7.2から6.4になります。
指数連動型ファンドは新しい比率へ合わせて保有量を調整するため、実施前後に機械的な売買が発生し得ます。これは業績悪化を意味しません。ただし、株価が高値圏にある時期と重なれば、短期需給の重荷になります。
AI投資の選別、円高、メモリーシェア低下が高PERの調整要因
ロイターは2026年7月、半導体株からAI投資を行うクラウド企業へ資金が移る可能性を報じました。AIサービスの収益が巨額投資へ見合わなければ、顧客が設備投資を選別し、テスター受注にも遅れて響きます。
成熟した自動車・産業向け半導体の弱さ、円高、メモリー分野のシェア低下も無視できません。さらに、転換社債は将来の希薄化要因です。高PER銘柄では、業績見通しがわずかに下振れしただけでも売りが集中しやすくなります。
一方、1,500億円を上限とする自社株買いは需給を支えます。ただし、転換社債による潜在的な希薄化を完全に打ち消すわけではありません。
まとめ|業績は強いが株価は成長の持続まで織り込んでいる

アドバンテストは、推論AI向けASIC、CPU、HBMの検査需要を取り込み、27年3月期1Qで最高益を更新しました。半導体が複雑になるほどテスト時間と挿入回数が増えるため、AI投資の恩恵は出荷数量以上に広がります。
中長期の成長期待は高い半面、今の株価はかなり先の利益成長まで織り込んでいます。AI半導体関連の中では業績の裏付けが強くても、割安な銘柄ではありません。
次に見る数字は、2Q以降の営業利益率、SoCテスター5,000台体制への進捗、メモリーシェアです。10月の指数調整は業績と切り分け、短期需給の変化として扱います。
中長期では、株価が下がったところを少しずつ買う余地があります。ただし、決算後に買いが集中した直後を無理に追う必要はありません。次回決算で利益率と受注を確かめ、業績の伸びが続くか見てからでも遅くないでしょう。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 テクニカルアナリスト(CMTA®)
著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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