高市早苗首相が重点投資分野に掲げ、「核融合発電」が国策テーマに浮上し、株式市場の主役に躍り出ています。政府は2040年度までの官民投資総額を3.1兆円規模と想定し、実用化の前倒しに動き始めました。株式市場でも関連銘柄が急騰する場面が相次いでいます。
そもそも核融合発電とはどのような技術で、どの企業が恩恵を受けるのでしょうか。本稿では、核融合発電の仕組みから、関連銘柄を見つけるための3つの軸、本命・出遅れ・海外銘柄、そして投資の注意点までをわかりやすく解説します。
核融合(核融合発電)関連銘柄とは?国策で注目の次世代エネルギー

核融合関連銘柄とは、核融合発電の実現に必要な技術・部品・素材を手がけ、実用化の恩恵を受けると期待される企業の株式です。まずは核融合発電の基本的な仕組みと、なぜ今これほど注目されるのかを押さえておきましょう。
核融合の仕組みと核分裂との違い
核融合発電は、太陽で起きている反応を地上で再現する技術です。重水素と三重水素という軽い原子核を1億度以上の超高温で融合させ、その際に生まれる莫大なエネルギーで発電します。燃料の重水素は海水から取り出せるため、資源が実質的に無限に近いのが最大の強みです。
いまの原子力発電が使う「核分裂」とは、仕組みも安全性も大きく異なります。核分裂はウランを分裂させる連鎖反応のため、制御に失敗すると暴走のリスクがあります。一方の核融合は、燃料の供給を止めれば反応がすぐに止まる構造で、暴走が起きません。放射性廃棄物も、核分裂の約10万年に対し、核融合は約100年で影響が下がるとされ、環境負荷の面でも優位です。
早期の実用化に向けて、高市首相も注力
核融合が投資テーマに急浮上した最大の理由は、国策による手厚い後押しです。高市首相が掲げる重点投資分野には、核融合・量子・AI・半導体・宇宙・防衛が並び、核融合はその筆頭テーマに挙げられています。
政府は2023年4月に核融合エネルギーの初の国家戦略を決定し、2025年6月にはこれを改定して工程表づくりに着手しました。2040年度までの官民投資総額は3.1兆円規模が想定され、2026年度以降は関連研究開発や実証炉建設への予算配分が本格化する見通しです。政策の裏付けを持つテーマである点が、株式市場での注目度を支えています。
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核融合発電の2つの方式|トカマク型とレーザー型

核融合発電には大きく2つの方式があり、関連銘柄もどちらの方式に関わるかで分かれます。銘柄を理解する前提に、方式の違いを押さえておきましょう。
磁場閉じ込め方式(トカマク型)
強い磁石でプラズマをドーナツ状に閉じ込める方式で、核融合開発の主流です。プラズマを閉じ込めるには超電導コイルによる強い磁場が必要で、そのコイルに使う高温超電導(HTS)線材が重要部品になります。
国際協力プロジェクトのITERや、日本のJT-60SAがこの方式を採用しています。後述する電線御三家(フジクラ・古河電工・住友電工)は、この磁場方式の中核を支える存在です。
レーザー(慣性)閉じ込め方式
高出力のレーザーを燃料に一斉照射し、瞬間的に圧縮・加熱して核融合を起こす方式です。大出力レーザー技術が鍵を握り、レーザー装置に強みを持つ企業に商機があります。
浜松ホトニクスがこの方式の代表格で、大阪大学発のスタートアップなども研究を進めています。方式ごとに関わる企業が違うため、銘柄選びでは「どちらの方式か」を意識すると整理しやすくなります。
核融合関連銘柄を発掘する3つの軸|ITER・JT-60SA・京都フュージョニアリング

核融合関連銘柄は数が多く、やみくもに探すと迷子になります。有効なのが、企業が関わる3つのプロジェクトから逆引きする方法です。ITER・JT-60SA・京都フュージョニアリングという3つの軸で見ると、どの企業がどこに関わっているかが整理できます。
ITER計画|世界7極が参加する国際プロジェクト
ITER(国際熱核融合実験炉)は、日本・EU・米国・ロシア・中国・韓国・インドの7極が参加する国際プロジェクトです。フランス南部で巨大な実験炉を建設中で、2034年の初期運転開始を目指しています。投入したエネルギーの10倍以上を取り出せるかどうかを実証する計画です。
日本は調達分担機器の多くを担い、三菱重工業(7011)・IHI(7013)・日本製鉄(5401)・住友電工(5802)などが重要部品を手がけています。ITER関連企業は、単なる思惑ではなく実際の受注実績を持つ点が評価のポイントです。
JT-60SA計画|日欧共同の世界最大級トカマク
JT-60SAは、日本と欧州が共同で茨城県那珂市に建設した核融合実験装置です。2023年に世界最大級のトカマク型装置に位置し、稼働を開始してITERを補完する研究データを蓄積しています。
国内で稼働しているため、日本企業の参加度が高いのが特徴です。助川電気工業(7711)が第一壁や磁気センサーを、東洋炭素(5310)が炉内部品向けの黒鉛材を納入するなど、中小型の関連銘柄を発掘する手がかりになります。
京都フュージョニアリング|出資する上場企業に注目
京都フュージョニアリング(KF)は、2019年に京都大学の研究成果をもとに設立された国産スタートアップです。核融合プラント関連の装置・システムを手がけ、国内核融合ベンチャーの象徴的存在になっています。同社は非上場ですが、多くの上場企業がKFに出資しており、その出資企業が関連銘柄で物色されます。
KFへの出資企業には、INPEX(1605)・三井物産(8031)・三菱商事(8058)・日揮ホールディングス(1963)・J-POWER(9513)・フジクラ(5803)などが名を連ねます。特にフジクラは2024年に追加出資を行い、部品供給と出資の両面でKFとの関係を深めています。出資企業の一覧は、関連銘柄を探す近道になります。
核融合関連の本命株|重工・機器メーカー

核融合炉という巨大で複雑な装置をつくるには、重工・機器メーカーの技術が欠かせません。ITERの部品を実際に受注している企業は、テーマの本命格です。
三菱重工業(7011)|核融合技術を牽引する本命株
日本の核融合開発を長年牽引してきたリーダー企業で、テーマの絶対本命です。ITER計画では日本の調達分担機器の多くに関与し、超電導コイルを冷やす極低温機器、真空容器、プラズマ加熱装置など、核融合炉の根幹部品を手がけています。
これほど幅広く核融合炉のコア技術に関わる企業は、国内では三菱重工をおいてほかにありません。原子力発電の再稼働需要も追い風に業績は好調で、核融合の本命であると同時に、業績・配当でも安定感のある銘柄です。

IHI(7013)|ITER向けヘリウム循環ポンプを納入
三菱重工と並ぶ重工大手で、ITER計画向けに超臨界圧ヘリウム循環ポンプを開発・納入した実績があります。このポンプは核融合炉の極低温システムを支える重要機器です。原子力分野でも原子炉格納容器や圧力容器を手がけており、核融合のニュースが出るたびに株価が反応しやすい銘柄です。

日本製鉄(5401)|超電導コイルの導体を製作
鉄鋼最大手で、子会社の日鉄エンジニアリングがITER計画に参画しています。プラズマを閉じ込める超電導コイルの核心部品である、トロイダル磁場(TF)コイル導体と中心ソレノイド(CS)導体の製作を担当しました。技術的難易度の高い部品を手がける点が、核融合分野での評価につながっています。

核融合関連の本命株|超電導線材「電線御三家」

核融合テーマで近年もっとも注目を集めているのが、超電導線材です。トカマク型の核融合炉はプラズマを閉じ込めるために強い磁場を必要とし、その磁場を生む超電導コイルに高温超電導(HTS)線材が不可欠です。この線材を量産できる企業は世界的にも希少で、日本の電線御三家(フジクラ・古河電工・住友電工)がその中核にあります。
フジクラ(5803)|核融合の看板株、HTS線材で世界有数
核融合炉に不可欠な高温超電導(HTS)線材を世界有数の規模で製造し、テーマの看板株と目される存在です。
液体窒素で冷却できる独自の線材を持ち、核融合スタートアップの京都フュージョニアリングや米コモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS)にも出資しています。超電導線材の生産能力を2028年度に現在の6〜8倍へ拡大する計画で、超電導事業に最大56億円規模の追加投資枠も確保しました。
全社業績も絶好調です。生成AI普及によるデータセンター向け光ケーブルが伸び、26年3月期は売上1兆1,824億円(前期比+20.7%)、営業利益1,887億円(同+39.2%)と大幅増収増益でした。AI・データセンター・核融合という複数テーマの中心にいる点が、株価の強さを支えています。

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古河電気工業(5801)|英スタートアップにHTS線材を供給
電線御三家の一角で、光ファイバーで世界2位のシェアを持つ多角化企業です。核融合では、英国の核融合スタートアップ「トカマクエナジー社」と、先進核融合原型炉ST80-HTS向けの高温超電導(HTS)線材の供給契約を締結しています。
2024年1月には同社へ1,000万ポンドを出資し、単なる部品供給から核融合事業のパートナーへと関係を深めています。フジクラと並ぶ超電導線材の有力銘柄です。

住友電気工業(5802)|ITERダイバータ部品が採用
電線御三家の一角で、自動車用ワイヤーハーネスで世界首位級の企業です。核融合では、グループのアライドマテリアルが開発・製造した「タングステンモノブロック」が、ITERのダイバータと呼ばれる高熱流束部品の重要な構成部材に採用されています。
ダイバータは核融合炉のなかでも特に過酷な熱環境にさらされる部分で、高い技術力が求められます。超電導線材のフジクラ・古河電工とは異なる切り口で核融合に関わる銘柄です。

核融合関連の本命株|レーザー・素材

磁場方式の超電導とは別に、レーザー方式や炉内素材でも独自の強みを持つ本命株があります。特定分野で世界トップクラスの技術を握る企業です。
浜松ホトニクス(6965)|レーザー核融合の周辺有望株
光技術の大手で、レーザー慣性閉じ込め方式に使う大出力レーザー装置で世界トップクラスの技術を持ちます。2025年8月には、核融合燃料への照射に使うレーザーで従来の2倍以上の光エネルギー密度での出力に成功したと発表しました。トヨタ自動車ともレーザー核融合発電の技術開発に取り組むとされ、磁場方式とは異なる切り口の本命で、注目を集めています。

東洋炭素(5310)|炉内部品の黒鉛で世界シェア3割
等方性黒鉛で世界シェア約30%を持つ素材メーカーです。同社の等方性黒鉛やCCコンポジット材は、核融合炉の内壁(第一壁)やダイバータなど、高熱流束を受ける部分に使われ、ITER・JT-60SAの両計画で採用実績があります。
半導体製造にも欠かせない素材のため、核融合と半導体という2軸のテーマ株で評価される点も強みです。単一テーマに依存しない事業構造が、中長期での安心感につながります。

核融合発電で急騰した事例|助川電気の3倍高

核融合炉の実現には、極限環境を制御する高度な技術が欠かせません。高温プラズマに耐える金属材料や、真空容器を作る溶接技術など、日本のものづくり企業が長年培った技術に商機があり、市場の期待が集まっています。実際に株価が急騰した事例を見ておきましょう。
助川電気工業(7711)|高市相場で11営業日3倍高

核融合関連銘柄への注目度を象徴するのが、助川電気工業(7711)の株価急騰です。同社はITERの協業企業の1つで、ITER向けにヒーターや温度センサーなどを提供した実績があります。JT-60SAでも第一壁や磁気センサーを納入しており、熱制御技術に強みを持ちます。
2025年10月4日の総裁選で高市氏が勝利すると、核融合の国策期待が一気に高まりました。株価は10月3日の安値3,955円から21日の高値1万2,250円まで、11営業日で3.09倍に急騰しました。時価総額の小さい銘柄は、テーマ相場が来ると値動きが非常に大きくなります。大きな利益の可能性がある一方、急騰の反動も速いため、高値づかみには注意が必要です。
出遅れ・小型の核融合関連銘柄
大型の本命株に対し、時価総額が小さく株価の振れ幅が大きい出遅れ株にも投資妙味があります。テーマとの関連が具体的な技術・実績に裏づけられた銘柄を選ぶのがポイントです。
| 銘柄名 | コード | 核融合との関連 |
|---|---|---|
| 東邦金属 | 5781 | 核融合科学研究所と協業し、炉内機器ダイバータを開発。タングステン加工に強み |
| ジェイテックコーポレーション | 3446 | 大阪大学発。レーザー核融合スタートアップ「エクスフュージョン」と技術提携 |
| 神島化学工業 | 4026 | レーザー用YAGセラミックスが慣性核融合のキーパーツ候補 |
| 木村化工機 | 6378 | JT-60SA向けに核融合実験装置の関連製品を納入 |
| マイクロ波化学 | 9227 | QSTと炉内壁材ベリリウムの省エネ精製技術を共同研究 |
出遅れ株はテーマが盛り上がると大きく動く半面、関連が薄い銘柄は沈静化時に本命株より早く下げやすい傾向があります。関連性が具体的な実績で裏づけられているかを、必ず確認しましょう。
海外(米国)の核融合関連銘柄と投資家のアクセス方法

核融合開発では米国の民間スタートアップも先行しています。日本から直接投資しづらい企業もありますが、動向を知っておくと関連銘柄の理解が深まります。
ヘリオン・エナジー(Helion)
米国の核融合スタートアップで、独自方式で早期の実用化を掲げています。マイクロソフトと電力供給契約を結び、話題になりました。現時点では非上場のため、個人が直接株式を買えません。
コモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS)
マサチューセッツ工科大学発の有力スタートアップで、高温超電導を使った小型トカマクの実現を目指しています。日本のフジクラがHTS線材を納入する取引先でもあります。こちらも非上場です。
上場・非上場をどう見るか
有力な海外スタートアップの多くは非上場のため、個人が直接投資するのは困難です。現実的なアプローチは、これらの企業に部品を供給したり出資したりしている日本の上場企業を通じて、間接的にテーマの成長を取り込む方法です。フジクラや古河電工が、その代表例といえます。
核融合関連銘柄に投資する際のポイント

成長期待の大きいテーマだからこそ、投資の前に押さえておきたい注意点があります。次の2点は特に意識しておきましょう。
実用化は2030年代後半以降|時間軸の長いテーマ
核融合発電が産業に育って本格化するのは2030年代後半から2040年代と見られています。ITERの初期運転も2034年に延期されました。「今すぐ実用化」ではない点は理解しておく必要があります。ただし、三菱重工やフジクラのように、実験炉段階から受注・売上が発生している企業は、実用化を待たずに業績への寄与が始まっています。実用化までの時間の長さと、足元の受注の有無を分けて考えるのが大切です。
テーマ株特有の急騰・急落に注意する
核融合は国策の後押しで材料が出やすい一方、政策発表やニュースで急騰し、材料が一巡すると急落する典型的なテーマ株です。助川電気の3倍高のような値動きは魅力である半面、高値づかみのリスクと表裏一体です。本命株で安定性を確保しつつ、出遅れ株は資金の一部にとどめるなど、大きな流れに逆らわない資金配分を心がけましょう。
まとめ|核融合関連銘柄は3つの軸と実績で選ぶ
核融合発電は、高市政権の後押しと2040年度までの官民投資3.1兆円という国策を追い風に、株式市場の主役級テーマに育ちました。実用化は2030年代後半以降ですが、関連企業はすでに実験炉段階で受注を積み上げています。
銘柄選びの軸は、ITER・JT-60SA・京都フュージョニアリングという3つのプロジェクトから逆引きする方法です。本命は重工の三菱重工・IHI・日本製鉄、超電導線材のフジクラ・古河電工・住友電工、レーザー・素材の浜松ホトニクス・東洋炭素。値動きの妙味を狙うなら助川電気などの小型株もあります。テーマ株特有の急落リスクを踏まえ、具体的な受注・技術の裏づけがある企業を軸に、中長期の視点で向き合いたいテーマです。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。

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