マンガ関連ECを主力とするTORICO(7138)の株価は、2026年9月14日に156円で取引を終えました。8月25日終値の199円からは下落しており、ETHの買い増しが続いても株高が続くとは限らない状況です。
イーサリアムの保有・運用と、國光宏尚氏の経営への関与は引き続き注目材料です。一方、最新決算では営業赤字が縮小する半面、暗号資産の評価損が最終損益を押し下げています。
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TORICOの暗号資産(ETH)取得による財務戦略の劇的な変貌

TORICOは、デジタル資産を財務基盤に組み込む「DAT戦略」へ舵を切りました。マンガECに加え、暗号資産の積極的な保有・運用を行うトレジャリー企業としての事業も進めています。
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DAT(デジタルアセット・トレジャリー)戦略が投資家の視線を集める理由
TORICOが掲げる「DAT戦略」は、暗号資産を企業の財務・事業戦略へ組み込み、企業価値の向上を目指す取り組みです。同社は余剰資金だけでなく、新株予約権による調達資金をETHの取得へ充当しています。
従来のマンガECの収益力に加え、保有ETHの価格や運用収益も企業評価を左右するようになりました。ただし、ETHの保有総量が増えても、株式数も増えれば1株当たりの取り分は薄まります。購入量だけでなく、取得資金をどう集めたかまで確認する必要があります。
イーサリアム(ETH)の連続取得がもたらす資産価値の透明性
2026年9月11日開示時点のETH保有量は2,974.5613ETH、総取得価額は約12億5,673万円です。ステーキング収入分等を含み、平均取得単価は1ETH当たり42万2,492円。直近の追加購入は26.1944ETH、取得価額は約1,000万円でした。
総取得価額は購入などに要した金額で、その時点の時価評価額ではありません。ETH価格が下がれば保有資産の価値も下がります。仮想通貨関連銘柄でも、保有型と取引所型では収益を動かす要因が異なります。TORICOでは保有ETHの価格・運用収益が重要です。
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ステーキングと外部運用でETH保有から収益化へ
2026年8月の月次開示では、ステーキング収入等として4.4435ETHを計上しました。ステーキングはネットワークの運営に参加して報酬を得る仕組みです。単なる値上がり待ちに加え、保有するETHから継続的な収益を得る戦略を進めています。
8月13日には、保有する60ETHを原資にした外部ヘッジファンドへの出資を決議しました。もっとも、運用でETHの数量が増えても円換算額が減る場合があります。会社は取引先の信用、流動性、システムなどのリスクも開示しており、利回りだけで安全性を評価できません。
TORICOの著名人関与とSNS拡散による需給への影響

Web3領域の起業家や著名人の関与は、TORICOの知名度を高める材料となりました。ただし、出資や役員就任の事実と、現在の買い需要は別です。過去の話題がその後の利益につながったかを確認します。
國光宏尚氏の取締役就任で進むWeb3への展開
gumi創業者の國光宏尚氏は、DAT事業への助言に加え、2026年6月26日の定時株主総会を経てTORICOの取締役に就任しました。現在の会社概要では社外取締役として掲載されており、助言に加えて経営を監督する立場も担っています。
國光氏はMint Townの代表取締役でもあり、TORICOは同社との連携を通じてETHの取得・運用を進めています。個人としての役員就任と、提携企業やファンドを通じた出資は区別して読む必要があります。
今後は、國光氏の知名度だけでなく、連携によって運用収益がどれだけ積み上がるかが焦点です。取締役就任そのものが利益増加や株価上昇を保証するわけではありません。
堀江貴文氏周辺コミュニティを通じた情報拡散の威力
実業家の堀江貴文氏は、Mint Townが運営するShooting StarファンドのLP(資金を提供する出資者)として投資に参画しています。TORICOの会社発表でも、2026年のイベント案内にその関係が記載されています。
こうした著名人との接点は、SNSを通じて新しい投資家に銘柄を知ってもらうきっかけになります。ただし、出資の公表時と現在では株価も資本政策も変わっています。過去の発信を、そのまま現在の買い推奨として扱うべきではありません。
本田圭佑氏もファンドを通じて参加したトレジャリー戦略
2026年1月14日には、本田圭佑氏もTORICOへ出資するファンドにLPとして参加したとSNSで公表しました。イーサリアムやトレジャリー企業の可能性への期待を示したものですが、TORICO株を市場で直接購入したという意味とは異なります。
著名投資家の参加は関心を集める材料でも、現在の株価が割安だと証明する材料にはなりません。出資時点から増えた発行済み株式数や、その後の決算も合わせて確認したいところです。
未行使831万株が残るTORICOの資本政策の両刃の剣

ETHの買い増しを支える一方、新株予約権の行使は株式数の増加による希薄化を伴います。資本政策は発行時の条件だけでなく、その後の行使と未行使残の両方が重要です。直近の月間行使状況を確認します。
第三者割当増資と新株予約権による資金調達の実態
TORICOは2026年2月12日、EVO FUNDを割当先とする第11回新株予約権104,596個(潜在株式数1,045万9,600株)を発行しました。1個の行使で100株が交付される仕組みです。
2026年9月1日の開示によると、8月には8,900個が行使され、89万株を交付しました。8月末の未行使残は83,100個、株式換算で831万株です。調達資金は順次ETHの取得へ充当されていますが、残りすべての資金調達が完了したわけではありません。
行使が進めば取得原資が増える半面、株式数も増えます。株価が低迷して行使が進まなければ、予定どおりの資金調達やETHの追加取得が難しくなる可能性があります。
潜在株式がもたらす株価へのシビアな下押し圧力
8月末に残る831万株分の潜在株式は、今後の需給を考えるうえで無視できません。8月の行使価額は195円でしたが、9月14日終値は156円です。過去に行使が進んだペースを、そのまま将来へ延ばすのは適切ではありません。
新株が増えると既存株主の持分比率は下がりますが、行使によって会社に資金も入ります。したがって、株式数の増加率と株価の下落率は同じではありません。ETHの取得・運用による資産増加が、1株当たりの価値の向上につながるかが焦点となります。
TORICOの1Q決算は営業赤字が縮小、ETH評価損で最終赤字が拡大

最新決算では、マンガ事業の利益と、全社費用を含む連結損益、ETHの評価損を分けて読む必要があります。営業赤字は縮小しましたが、最終赤字は拡大しました。どの段階の利益が変化したかで、決算の読み方が変わります。
マンガ事業の黒字と連結赤字を分けて読む
2026年8月13日発表の27年3月期1Qは、売上高6億9,302万円、営業損失2,575万円でした。前年同期の営業損失6,760万円から改善しています。一方、暗号資産評価損2億1,679万円により、親会社株主に帰属する四半期純損失は2億4,195万円へ拡大しました。
マンガ事業のセグメント利益は4,485万円、暗号資産事業は106万円です。各事業は黒字でも、本社費用などの調整後には連結営業赤字となります。暗号資産評価損は営業外費用であり、マンガ販売の損失や、同額の現金流出が発生したという意味ではありません。数値は万円未満を切り捨てています。
27年3月期は営業利益0円を計画、最終利益予想は非開示
27年3月期の会社予想は、売上高29億1,000万円、営業利益0円です。ETHの期末時価評価による影響が大きいため、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は非開示としています。営業損益が均衡しても、最終損益までゼロになる予想ではありません。
決算説明資料では、イベント売上比率と自社EC売上比率の上昇が粗利率を押し上げたと説明しています。マンガ・キャラクターのグッズ販売やイベントは、ファンの「推し活」需要を収益へつなぐ事業です。1Qの営業赤字を取り戻せるか、利益率の改善が続くかを追います。

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TORICOの2026年秋に向けた上振れ・下振れの分岐シナリオ

2026年9月は、株価の反発が続くか、ETHの買い増しが1株当たり価値へつながるかが焦点です。著名人の参加という初期の話題に加え、運用の実績と新株予約権の残高が、今後の評価を左右します。
9月14日終値156円でも、株価の安さと割安さは別
TORICOは8月25日の終値199円から、9月14日の156円へ約21.6%下落しました。一方、9月14日は前営業日の142円から約9.9%上昇しており、下落後の反発が見られます。ただし、この1日の上昇だけで上昇トレンドへの転換は確認できません。
会社が最終利益予想を公表していないため、予想PERで割安・割高を測るのは困難です。ETHの総取得価額をそのまま現在の資産価値と扱わず、保有資産の時価、現預金・負債、未行使の新株予約権を合わせて確認します。1株の値段が低いだけでは、割安とは言えません。

暗号資産相場(ETH)の継続性が上振れの生命線
TORICOの今後の評価にとって、ETHの円建て価格は大きな要因です。ただし、保有数量の増加と円換算した資産価値の増加は同じではありません。9月11日開示の平均取得単価42万2,492円と、その後の市場価格の差にも注意が必要です。
上向く条件は、ETH価格の回復に加え、ステーキングなどの運用収益が積み上がり、株式数の増加を考慮しても1株当たり価値が伸びることです。暗号資産市場は株式市場の休場中も動くため、週末や夜間の変動によって翌営業日の株価が大きく動く可能性があります。
「期待の消費」と需給悪化による下振れへの警戒
下振れ要因は、ETHの下落による評価損の拡大と、新株発行による希薄化です。さらに、株価低迷で新株予約権の行使が進まない場合には、追加取得の原資が予定どおり集まらないリスクもあります。資金調達が進む場合と進まない場合の両方を見ておく必要があります。
27年3月期1Qはマンガ事業で利益を確保しましたが、全社費用を含む営業損益はなお赤字です。ETH価格の戻りだけに期待せず、次の決算で営業損失が縮小しているか、月次開示で未行使残がどう変わったかを確かめたい銘柄です。
まとめ

TORICO(7138)は、ETHの継続取得から運用収益の拡大へ事業を進めています。9月11日開示の保有量は約2,975ETHですが、買い増しだけで株価上昇が決まるわけではありません。
今後はETHの価格・運用収益と、新株予約権の行使による株式数の増加を併せて確認します。マンガ事業の黒字と連結営業赤字の違いにも注意し、通期の営業利益0円という会社計画に近づいているかを追います。
反発が続くかを見極めるうえでも、著名人の過去の発信より、その後の決算と資金調達の進捗が重要です。

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執筆者情報
金融ライター
2016年大手証券会社に入社、2018年に最大手オンライン証券会社に入社し、機関投資家部門(ホールセール)を立ち上げ、翌年2019年には同社シンガポール拠点設立。2022年より日系証券会社の運用部にてポートフォリオマネジャーの経験を得て以降、一貫して運用業務に従事。

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