サンディスク(SNDK)は、2025年2月の再上場後に50ドル前後から2,000ドルを超えるまで急騰しました。2026年8月5日に発表したFY2026 Q4は過去最高益となりましたが、翌6日の株価は約13%下落しています。AI需要で業績は急回復した一方、株価には高い利益率の継続が織り込まれました。高値から半値近く下がった現在をどう捉えるか、最新決算、NAND需給、評価倍率に加え、キオクシアなど日本株への影響も検証します。
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サンディスクはNANDフラッシュに特化した米国企業

サンディスクは、電源を切ってもデータが残るNANDフラッシュメモリーを手掛ける米国企業です。2025年にWestern Digitalから分離したため、新会社としての株価履歴はまだ1年半ほどしかありません。
一方、ブランドの歴史は長く、個人向けメモリーカードからAIデータセンター用SSDまで扱います。現在の企業価値を考える際は、消費者向けブランドではなく、データセンター向けNANDの収益力が中心です。
Western Digitalから分離して2025年2月に再上場
Western DigitalはHDDとフラッシュメモリーを分離し、2025年2月21日にサンディスクを独立させました。株式は同月24日からNASDAQで取引されています。分離前の財務諸表はWestern Digitalの事業を切り出したカーブアウト数値で、現在の資本構成と完全には一致しません。
長期チャートを旧サンディスク株やWestern Digital株へ機械的につなげない注意が必要です。SECの分離資料でも両社は独立企業として扱われています。(出典:FY2025 Form 10-K)
データセンターからSDカードまで3市場へ展開
売上高はDatacenter、Edge、Consumerの3市場に分けて開示されています。Datacenterはクラウド事業者向けSSD、EdgeはPCやスマートフォン、車載機器向け、ConsumerはSDカードやUSBメモリーなどです。ただし、この3区分は独立した報告セグメントではありません。
製造技術を共有するため、高採算のデータセンター製品へ生産を振り向けられるかが全社利益を左右します。Consumerの増収だけでAI成長とは判断できません。
株価急騰の原動力はAI需要と収益性の改善

FY2025のサンディスクは売上高73.55億ドル、営業損失13.77億ドルでした。FY2026はAIサーバー向け需要とNAND価格の上昇が重なり、Q1からQ3までの営業利益は53.52億ドルへ急増。Q4は売上高89.7億ドル、GAAP純利益約69億ドルを計上しました。
単なる売上成長ではなく、販売単価と製品構成が同時に改善した点が急回復の核心です。赤字の縮小ではなく、利益水準そのものが変わりました。株価が再評価された最大の理由は、赤字企業が短期間で高収益企業へ変わった点にあります。
株式需給では、2026年4月20日のNasdaq-100採用も追い風になりました。指数連動資金の買いが見込める一方、採用自体が利益を増やすわけではありません。(出典:Nasdaq発表)
| 期間 | 売上高 | 営業損益 | 純損益 |
|---|---|---|---|
| FY2023 | 60.86億ドル | -20.35億ドル | -21.43億ドル |
| FY2024 | 66.63億ドル | -4.68億ドル | -6.72億ドル |
| FY2025 | 73.55億ドル | -13.77億ドル | -16.41億ドル |
| FY2026 Q1〜Q3 | 112.83億ドル | 53.52億ドル | 45.30億ドル |
(出典:FY2025 Form 10-K、FY2026 Q3 Form 10-Q)
データセンター売上高はQ4に29.8億ドルまで拡大
FY2026 Q4のデータセンター売上高は29.8億ドルとなり、Q3の14.67億ドルから約2倍へ増えました。全社売上高89.7億ドルの約3分の1を占めます。Edgeも54.3億ドルへ伸びた一方、Consumerは5.56億ドルへ縮小しました。企業向けSSDを含む高採算分野への構成変化が、全社利益を押し上げています。
AI向けストレージ需要は期待だけでなく、データセンター売上高の数量と構成へ表れ始めました。今後は価格上昇だけでなく、出荷量を伴う成長が続くかを確認します。(出典:FY2026 Q4決算)
NAND価格上昇と製品構成の改善で粗利益率は84.6%へ
Q4の非GAAP粗利益率は84.6%となり、Q3の78.5%からさらに上昇しました。供給不足によるNAND価格の上昇に加え、高単価のデータセンター製品とEdge向け製品が伸びたためです。Q1の29.9%からわずか3四半期で54.7ポイント上がっており、改善の速さは際立ちます。
販売価格と高採算品の比率が同時に上がり、増収が利益へ流れやすい収益構造になりました。ただし、歴史的に高い水準だけに、値上がりの鈍化や競合の増産は利益率低下へ直結しやすくなります。
416億ドルの残存履行義務と60億ドルの自社株買いも評価材料
2026年4月3日時点の残存履行義務は416億ドルで、その約15%を今後12カ月に売上計上する予定です。残存履行義務とは、契約済みでも未計上の売上に相当します。会社は複数年契約を5件結び、60億ドルの自社株買い枠も設定しました。顧客前受金を含む契約負債は5.11億ドルへ増えています。
無借金化と契約収入の積み上げは、従来のNAND市況株より利益を安定させる材料です。8月の決算時点では6顧客と8件、総額939億ドルの長期契約へ拡大しました。ただし、契約総額がそのまま利益になるわけではありません。(出典:FY2026 Q4決算、Reuters)
サンディスクの株価は再上場来高値から約50%下落しても期待先行

サンディスク株は2025年2月21日の50.37ドルから上昇し、2026年6月22日に上場来高値2,354.39ドルを付けました。好決算を発表した翌8月6日は約13%安の1,178ドルとなり、高値からの下落率は約50%へ広がりました。
それでも2025年末終値237.38ドルとの比較では約5倍です。市場が売ったのは赤字転落ではなく、FY2027 Q1見通しが極端に高い期待へ届かなかったためです。単に「高値から半値になったから買い場」と決めるのは早く、現在の利益率を何四半期保てるかが株価を左右します。(出典:Reuters、FY2026 Q4決算)
50ドル前後の再上場から2,354ドルまで上昇した株価を時系列で整理
再上場直後の株価は50ドル前後でしたが、2025年4月7日には一時27.89ドルまで下落しました。その後、NANDの値上がりとAI向けSSDへの期待から上昇し、2026年6月に2,000ドルを突破しています。7月下旬には1,000ドル近くまで急落し、8月5日の決算発表後も売られました。業績と株価が逆方向へ動いた点は、期待の大きさを示しています。
株式分割は発表されておらず、1株当たり価格の高さも短期売買を難しくしています。(出典:公式株価情報)

SOX指数急落とAI投資ピークアウト懸念が売りを広げた
7月の下落はサンディスク固有の悪材料だけで起きたわけではありません。SOX指数の急落や、AIインフラ投資がピークを迎えるとの警戒から、Micronやキオクシアを含むメモリー株へ利益確定売りが広がりました。株探でも7月に関連銘柄の急落を伝える材料記事が相次いでいます。
7月23日から29日までの4営業日では、終値が1,610.33ドルから1,015.89ドルへ下がりました。年初からの上昇率が大きいため、投資家がリスクを落とす場面では売却対象になりやすい状態です。
決算後のPER低下だけで割安とは決められない
FY2026のGAAP純利益は、Q1からQ3までの45.30億ドルとQ4の約69億ドルを合計すると概算114億ドルです。8月6日の株価と発行済み株式数を使った実績PERは概算16倍前後まで低下します。ただし、利益が短期間で急増したため、過去12カ月の利益だけでは市況悪化時の収益を表しにくい面があります。配当は実施していません。
合弁会社向け投資は通常の設備取得額だけでは捉えきれません。PERが下がって見えても、粗利益率80%台が平常値とは限らず、利益率が正常化すれば倍率は再び上がります。株価と同時に、数量、価格、製品構成を追う必要があります。
Micronやキオクシアとの単純な評価倍率比較には注意が必要
Micronの実績PERは同日時点で約20倍ですが、同社はNANDだけでなくDRAMやHBMも製造しています。キオクシアはサンディスクと生産設備を共有する一方、工場保有や資本構成が異なります。サンディスクのPERが高いから即座に割高、競合より株価上昇率が低いから割安とは判断できません。
MicronはHBMの伸びが利益を押し上げ、キオクシアは工場投資の負担が直接表れます。NANDの利益感応度と契約構造をそろえなければ、倍率の高低を投資判断へ使えません。
AIサーバー向けNANDは次の成長段階へ進む

生成AIでは、モデルを学習させる段階だけでなく、利用者の質問へ回答する推論処理が増えています。推論を繰り返すには、大量の文書やコード、画像を保存し、GPUの近くへ効率よく読み出すストレージが必要です。
この変化はNANDの用途を、保管中心からAI処理を支える部品へ広げます。一方、新技術が製品認定と量産を経て売上になるまでには時間がかかります。既存SSDは現在の売上、HBFは将来の選択肢として分けて評価します。
生成AIの推論拡大で大容量ストレージ需要が増える
AIの推論では、学習済みモデルだけでなく、回答の根拠となる企業データや利用履歴も参照します。すべてを高価なHBMへ置けないため、企業向けSSDが大容量データの保管と読み出しを担います。米エネルギー省は、データセンターが米国電力に占める比率を2028年に6.7〜12%と予測しました。
国際エネルギー機関も2030年までの世界のデータセンター電力消費を約945TWhと見込みます。容量だけでなく、電力効率もSSD選定を左右します。(出典:米エネルギー省、IEA)
キオクシアとの共同生産契約は2034年まで延長
サンディスクはキオクシアとのFlash Venturesを通じ、日本の四日市・北上工場でNANDを共同生産しています。各合弁会社への出資比率は49.9%で、原則として生産量をほぼ折半します。2026年1月には契約を2034年末まで延長し、サンディスクは製造サービスと供給確保の対価として11.65億ドルを支払います。
支払い期間は2026〜2029年で、固定費の約半分も負担します。巨額工場を単独保有せず、先端NANDへ投資できる点が強みです。(出典:共同発表)
初のOCP仕様公開でHBFは構想から標準化段階へ進んだ
サンディスクとSK hynixは2026年8月3日、HBFの初期技術仕様をOpen Compute Projectで公開しました。HBFはNANDを積層し、HBMに近い帯域と大容量の両立を狙う技術です。GoogleとTenstorrentも仕様検証へ参加しています。今回の仕様は接続方式、信頼性、パッケージ、ソフトウェア操作を定めました。
HBMを全面的に置き換える製品ではなく、併用が前提です。標準化は前進ですが、2026年後半のサンプル提供と2027年初めの搭載機器評価を通過するまで、収益貢献は未確定です。(出典:サンディスク発表)
FY2026は過去最高益でも株価下落|8月13日が次の試金石

サンディスクが8月5日に発表したFY2026 Q4は、売上高89.7億ドル、非GAAP EPS39.25ドルでした。会社予想の売上高77.5億〜82.5億ドル、EPS30〜33ドルを上回っています。それでも翌6日の株価は約13%下落しました。8月13日にはInvestor Dayを開催する予定です。
会社はFY2027 Q1に売上高103億〜108億ドル、非GAAP EPS44〜46ドル、非GAAP粗利益率83〜85%を見込みます。増収増益の予想でも株価が売られた点から、決算の良し悪しより期待との差が効いていると分かります。現在問われているのはAI需要の強さではなく、80%台の粗利益率を何四半期続けられるかです。(出典:FY2026 Q4決算、Reuters)
データセンター売上高の数量増が価格上昇と両立するか
Q4売上高はQ3から51%増え、データセンター売上高は約2倍になりました。ただし、値上げだけで達成した増収と、データセンター向け出荷量を伴う増収では持続性が異なります。今後の決算では市場別売上高、1GB当たり平均販売価格、出荷ビット数を確認します。Consumerの売上高はQ4に前四半期比32%減っており、価格上昇が既存需要を圧迫していないかも注目します。
価格上昇とデータセンター向け出荷量の増加が両立して初めて、AI需要が継続利益へつながります。
粗利益率84.6%からの小幅低下でも株価は反応しやすい
Q4の非GAAP粗利益率は84.6%まで上がりましたが、FY2027 Q1の会社予想は83〜85%です。中央値では小幅低下にすぎないものの、株価は決算後に急落しました。現在の評価にはNAND価格の上昇だけでなく、高採算SSDの比率上昇と高い利益率の継続まで含まれています。
利益率が非常に高いため、価格上昇の鈍化、競合の増産、低採算品の増加が少し表れるだけでも、利益予想は下方へ動きやすくなります。粗利益率の数字だけでなく、低下理由が価格、数量、製品構成のどこにあるかを確認します。
8件939億ドルの長期契約は利益安定と機会損失の両面を持つ
会社は6顧客と8件、総額939億ドルの長期契約を結び、FY2027末には生産量の半分、FY2028には3分の2を契約販売へ移す計画です。販売量と価格を読みやすくする一方、供給不足時にはスポット価格上昇の恩恵を取り逃す可能性があります。契約額の大きさだけで利益の安定を保証できません。
Investor Dayでは価格の下限だけでなく、上限、更新条件、設備投資負担まで確認します。(出典:Reuters、FY2026 Q4決算)
キオクシアと競合各社の増産が供給過剰を招くリスクも残る
足元では需要が供給を上回っていますが、メモリー市況は増産がそろうと反転しやすい業界です。キオクシアは北上工場で次世代NANDの生産を進め、SamsungやMicronもAI向けメモリーへ投資しています。新設能力が本格稼働する時期にAI投資が鈍れば、販売価格と稼働率が同時に下がります。
Q3のサンディスク自身の現金設備投資は売上高の1.4%でしたが、合弁会社の投資も含めた総額を見る必要があります。受注残の増加だけでなく、業界全体の設備投資と在庫日数が供給過剰の前触れになります。
サンディスクの決算はキオクシアなど日本株へどう波及するか

サンディスクの決算は、米国株だけの材料ではありません。同社はキオクシアと四日市・北上工場を共同運営しており、NAND価格、工場稼働率、先端品への投資負担が日本企業の収益にもつながります。
供給増へ向けた設備投資が動けば、東京エレクトロン、SCREENホールディングス、KOKUSAI ELECTRICなど製造装置株にも波及します。ただし、サンディスク株が上がっただけでは装置受注は増えません。日本株への影響はNAND各社が実際に増産を決めた後、設備投資を通じて表れます。
キオクシアはNAND高と共同生産の恩恵を最も直接受ける
日本株で影響が最も大きいのはキオクシアホールディングス(285A)です。両社はFlash Venturesを共同運営し、生産量と費用を分け合います。Q4にデータセンター売上高が約2倍へ伸びた事実はNAND需給の強さを示し、合弁工場の稼働率と販売価格を通じてキオクシアにも恩恵が及びます。
一方、サンディスクは長期契約で大口顧客を囲い込み、HBFではSK hynixと標準化を進めています。共同生産の利益と、販売先を奪い合う競争は別です。好決算はキオクシアへの追い風ですが、サンディスクが長期契約とデータセンター製品で先行すれば競争圧力にもなります。(出典:両社開示、キオクシアInvestor Day)
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東京エレクトロンなど装置株への波及には時間差がある
NAND価格の上昇が、国内の製造装置各社へすぐ売上として表れるわけではありません。メモリーメーカーが増産を決め、装置を発注し、納入されて初めて業績へ反映されます。東京エレクトロンのFY2027 Q1装置売上では、不揮発性メモリー向けは11%で、DRAM向け57%を下回ります。
KOKUSAI ELECTRICは3D NANDの積層化で成膜装置の需要増を見込み、SCREENは洗浄装置を供給します。NAND価格が上がっても、メーカーが増産を決めなければ装置受注にはつながりません。装置株ではキオクシアの設備投資額と、各社のNAND向け受注を確認します。(出典:各社IR資料)
まとめ|サンディスク株は高利益率の持続期間が値動きを決める
サンディスクはAI向けNAND需要を取り込み、赤字企業から高収益企業へ急転換しました。データセンター売上高の増加、長期契約、無借金化、HBFの標準化は中長期の強みであり、業績の急回復自体は明確に評価できます。
一方、好決算の翌日に株価が約13%下落した事実は、AI需要と高い利益率への期待が大きかった証拠です。高値から約50%下がっても、下落率だけを理由に買い場とは決められません。
今後は、データセンター向けSSDの出荷量、NAND価格、粗利益率、長期契約の採算、競合の設備投資を順に確認します。日本株では、キオクシアの出荷量と国内装置各社のNAND向け受注に同じ変化が表れるかを追います。
反対に、NAND価格の上昇だけで利益が膨らみ、出荷数量や製品構成が弱ければ、利益予想と評価倍率は同時に下がりやすくなります。サンディスク株を見る軸は「AI需要が強いか」から「高い利益率のまま何四半期続けられるか」へ変わりました。キオクシアには追い風と競争圧力が同時に働き、装置株には実際の増産決定が必要です。

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日本投資機構株式会社
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