みずほフィナンシャルグループ(8411)の株価は、2026年7月23日に8,816円まで上昇し、2021年の安値から約6倍になりました。27年3月期は3期連続の最高益を見込んでいますが、株価純資産倍率(PBR)も1.79倍まで上がっています。
今後は、利益成長が現在の高い評価に追いつけるかで株価の方向が変わります。最新決算、株主還元、同業比較をもとに、みずほFGの株価を左右する条件を整理します。
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みずほFGは銀行・信託・証券を一体運営するメガバンク

みずほFGは、みずほ銀行だけを保有する会社ではありません。信託銀行、証券会社、資産運用会社まで傘下に置き、企業融資からM&A、個人の資産形成まで幅広く扱う総合金融グループです。
銀行の貸出金利が上がる局面では資金利益が伸びやすい一方、証券・投資銀行業務は企業の資金調達や市場環境に左右されます。複数の利益源があるため、みずほFGの業績を政策金利だけで判断するのは不十分です。この違いが、株価材料への反応も分けます。
3行統合から現在の銀行・信託・証券体制ができるまで
現在のみずほグループは、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の経営統合を起点とします。2000年にみずほホールディングスが発足し、2003年に持株会社のみずほFGが設立されました。
現在は、みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券、Asset Management Oneなどを傘下に置きます。銀行の預金・貸出だけでなく、不動産や年金を扱う信託、株式・債券の引受を担う証券まで一体運営できる点が特徴です。統合を通じ、国内外の顧客基盤も広がりました。
顧客部門と市場部門が利益を生み出す仕組み
みずほFGの利益は、個人や企業との取引を担う顧客部門と、債券・株式・為替を扱う市場部門に大きく分かれます。顧客部門では貸出金利と預金金利の差である預貸金利ざやに加え、M&Aや資産運用の手数料も収益源です。
市場部門は、保有債券の運用やセールス&トレーディングで利益を稼ぎます。最新1Qでは顧客部門と市場部門がそろって増益となり、利益構造の厚みが増しました。景気や市場の変化に応じ、収益の柱も入れ替わります。
みずほFGの株価は5年で約6倍、PBR1.79倍まで再評価

みずほFGの株価は、長く続いた低金利環境からの転換を先取りする形で上昇しました。現在は、低PBRの修正を期待して買われる段階から、ROEの改善幅に応じて評価される段階へ移っています。市場の見方が変わりました。
ただし、株価が上昇しただけでは割高とも割安とも判断できません。8月5日終値と発行済株式数から概算した時価総額は約20.7兆円です。銀行株では、利益に対する株価の高さを示すPERに加え、純資産に対する評価を示すPBR、自己資本を使って利益を生む力であるROEを見る必要があります。
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5年週足チャートと直近6カ月から株価上昇の転換点を確認
2021年末に1,400円前後だった株価は、日銀の金融政策正常化が意識されるにつれて上昇基調へ入りました。2026年に入ると、1月5日の5,775円から7月23日の8,816円まで約53%上昇しています。

一方、3月23日には一時5,834円まで下げており、上昇一辺倒ではありません。2025年8月の52週安値4,449円から見ても、上昇率は大きくなりました。なお、比較には2020年10月に10株を1株へ併合した後の調整済み株価を使っています。8月5日終値8,470円は年初来高値まで約4%の位置にあり、底値圏ではなく高値圏です。
PER・PBR・配当利回りを三菱UFJ・三井住友FGと比較
2026年8月5日終値を基準にすると、みずほFGの予想PERは約14.7倍、PBRは約1.79倍、予想配当利回りは約1.77%です。PERは他のメガバンクと大差がありません。
| 銘柄 | 終値 | 予想PER | PBR | 予想配当利回り |
|---|---|---|---|---|
| みずほFG | 8,470円 | 約14.7倍 | 約1.79倍 | 約1.77% |
| 三菱UFJ FG | 3,541円 | 約15.0倍 | 約1.78倍 | 約2.67% |
| 三井住友FG | 6,666円 | 約15.1倍 | 約1.60倍 | 約2.66% |
みずほFGは3社でPBRが最も高く、配当利回りは最も低い状態です。指標ごとに評価差があります。市場はすでにROE改善を評価しており、ここからは期待を実績へ変え続ける必要があります。
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平均目標株価8,707円から見える現在株価の織り込み度
2026年8月6日時点のアナリスト11人による平均目標株価は8,707円でした。8月5日終値8,470円との差は約2.8%です。平均値だけを見れば、目先の上値余地は大きくありません。
もっとも、目標株価は各社の業績前提や更新時期が異なり、そのまま売買基準にはできません。最低・最高予想の幅も広く、平均値は補助材料にとどまります。注目すべきなのは、好決算後も利益予想の引き上げが続き、現在の評価を正当化できるかです。
27年3月期1Qは純利益45.5%増、通期1.4兆円へ上方修正

2026年7月30日に発表された27年3月期1Qでは、金利上昇の恩恵に加え、法人手数料や市場取引も伸びました。顧客部門と市場部門の両方が利益を押し上げています。利益の質も改善しました。
会社は通期純利益予想を1.3兆円から1.4兆円へ引き上げました。連結業務純益予想も1.63兆円から1.75兆円へ増額しています。計画の土台自体が上がりました。1Q時点で通期計画の約30%を稼ぎ、3期連続の最高益へ強い滑り出しです。
純利益4,229億円、ROE12.5%で過去最高益更新へ前進
1Qの連結業務純益は5,758億円で、前年同期比81.9%増えました。連結業務純益は、銀行本来の業務や手数料、市場取引から得た利益を示し、特殊な損益を除いて収益力を判断する指標です。
直近12カ月のROEは12.5%となり、前年同期から4.0ポイント改善しました。経費率も47.7%へ低下しています。売上規模だけでなく、資本と経費を効率よく使って利益を増やした点が評価できます。収益性の変化が数字へ表れた四半期です。

顧客部門と市場部門の両方が増益をけん引
顧客部門の業務純益は3,358億円で、前年同期から867億円増えました。国内法人向けの非金利収益や預貸金収益が伸び、個人・中小企業部門でも業務純益が前年同期比117%増となっています。
市場部門の業務純益は1,997億円で、前年同期から1,262億円増えました。銀行勘定とセールス&トレーディングの双方が伸びています。金利収益と手数料・市場収益が同時に伸びた点は、今回の決算で最も強い部分です。単独要因に偏った増益ではありません。
信用コストと不良債権比率から利益の持続性を点検
貸倒れに備える費用である信用コストは、1Qで61億円に抑えられました。通期計画は1,100億円のため、序盤の負担は限定的です。不良債権比率も2025年3月末の1.04%から、2026年6月末には0.84%へ低下しました。
ただし、信用コストは景気悪化から遅れて増える傾向があります。中東情勢や海外景気の減速が企業財務へ波及すれば、1Qの低い費用水準が続くとは限りません。2Q以降も引当金と大口先の動向を確認すべきです。
政策金利1.0%の追い風は続くが、増益源は金利だけではない

日銀は2026年6月に政策金利を1.0%へ引き上げ、7月31日の会合では同水準を維持しました。金利が上がると、貸出金利の改定が預金金利より先行しやすく、銀行の利ざや改善につながります。
一方、みずほFGの最新会社計画は、すでに政策金利1.0%を前提としています。日経平均57,000円、ドル円150円も業績予想の前提です。1.0%到達そのものは新材料ではなく、追加利上げと非金利収益の伸びが次の上振れ要因です。
預貸金利ざやの改善が国内資金利益を押し上げる
預貸金利ざやは、貸出金利から預金金利などの資金調達コストを差し引いた収益性を示します。1Q決算では、みずほの国内貸出利ざやが前年同期の1.10%から1.26%へ改善しました。
企業の資金需要も追い風です。日銀は2026年6月時点でも金融機関の貸出態度は積極的で、資金需要が増えていると分析しています。利上げが緩やかに進み、貸出残高も伸びれば、国内資金利益には持続的な増益余地があります。預金獲得競争による調達費の上昇には注意が必要です。
法人手数料・投資銀行・セールス&トレーディングも拡大
1Qの非金利収益は3,768億円で、前年同期から600億円増えました。非金利収益とは、融資の利息ではなく、M&A助言、債券引受、資産運用、決済などから得る手数料収入です。
金利が据え置かれても非金利収益が伸びれば、利益成長を継続できます。国内企業の事業再編や海外投資銀行業務を取り込めるかが、金利敏感株から総合金融株へ評価を広げる分岐点です。相場変動に左右されにくい継続収益の比率も見たいところです。量と質の両面を追います。

ROE12.5%と総額2,000億円の自己株取得が高PBRを支える

銀行株のPBRは、利益率と株主還元への期待を強く反映します。純資産を積み上げてもROEが低ければ、市場は1倍未満の評価を付けやすいからです。みずほFGはROE改善と自己株取得を同時に進めています。
現在のPBR1.79倍は、単に割高だから売られて当然という水準ではありません。高いROEを長く維持できれば、1倍を超える評価にも合理性があります。ただし、ROEが再び低下すれば、他のメガバンクより高い評価を維持する根拠も弱くなります。
年間150円配当と6期連続増配が示す還元姿勢
27年3月期の年間配当予想は150円で、前期から5円の増配です。会社予想どおりなら6期連続増配となります。8月5日終値に対する配当利回りは約1.77%で、利回り自体は他のメガバンクを下回ります。配当と自己株取得を合わせた総還元性向は50%以上が目安で、株主優待は設けていません。
一方、会社は5月と7月に各1,000億円、合計2,000億円を上限とする自己株取得を決議しました。取得株は全株消却する方針です。1株当たり利益の押し上げを通じ、配当だけでは見えない還元効果が期待できます。還元姿勢を数字で示しました。

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政策保有株式の売却と自社株消却が資本効率を高める
みずほFGは、2025年3月末から2028年3月末までに、政策保有株式を取得原価ベースで3,500億円以上削減する計画です。2026年6月末までに1,252億円を売却し、売却応諾分を含めると1,758億円まで進みました。
売却益は一過性ですが、保有株の価格変動リスクを減らし、浮いた資本を成長投資や還元へ振り向けられます。恒常的な利益と売却益は分けて評価すべきです。持ち合い株を減らし、自社株を消却する資本の入れ替えがPBR改善を支えています。
みずほFGの今後の株価は追加利上げ・2Q進捗・成長投資で動く

みずほFGの基本見通しは、国内利ざやと非金利収益の拡大が続けば、利益成長も継続するというものです。ただし、株価はすでに年初来高値に近く、1Q好決算と還元強化の相当部分を織り込んでいます。
ここから評価を一段上げるには、既知の好材料では足りません。利益予想の再増額か、資本効率がさらに改善する材料が必要です。評価のハードルは上がっています。日銀の次の一手、2Qでの計画進捗、海外・デジタル投資の利益化を順番に確認する局面です。
9月の日銀会合で1.25%への追加利上げが示されるか
次回の日銀金融政策決定会合は2026年9月17日と18日に予定されています。7月会合では政策金利1.0%を据え置きましたが、1人の審議委員は1.25%への引き上げを提案しました。
日銀は基調的な物価上昇率が2%を上回るリスクにも言及しています。追加利上げ観測が強まれば銀行株には追い風ですが、実施時期だけでなく長期金利や為替の反応も重要です。急な金利上昇は債券損失を拡大させるためです。利上げの速度が株価反応を左右します。
2Q決算で金利ざや・非金利収益・信用コストを確認
2Qでは、国内貸出利ざやが1Qの改善基調を維持できるかを確認します。同時に、好調だった非金利収益と市場部門が一過性ではなく、顧客取引を伴って伸びているかも検証します。
もう一つの確認点が信用コストです。1Qの低水準が続けば、通期計画には余裕が生まれます。追加引当の有無も確認します。増益額だけでなく、利益の内訳と損失発生率が現在のPBRを維持できるかを決めます。通期上方修正後の再増額余地も、この3項目で判断できます。
楽天銀行提携とAvendusが非金利収益へつながるか
みずほ銀行は楽天銀行との戦略的資本業務提携を進め、個人金融やデジタルサービスの拡大を狙います。海外では、インドの投資銀行Avendusの株式取得を通じ、成長市場でのM&Aや資本市場業務を強化する方針です。
買収や提携は、発表時点では利益を保証しません。顧客基盤の相互送客、手数料収益、統合費用を決算で追う必要があります。国内金利に依存しない利益が増えれば、みずほFGに対する評価の幅も広がります。数字が出るまでは期待先行と区別します。
株価の下押し要因は高値圏・債券評価損・信用コスト

好業績が続いていても、株価が下がらないとは限りません。みずほFGには、評価水準の高さ、保有債券の損失、景気悪化に伴う信用コストという銀行株特有のリスクがあります。
特に金利上昇は、貸出収益には追い風でも、債券価格と借り手の返済能力には逆風となる両刃の剣です。利益の増加だけでなく、バランスシートの変化も見る必要があります。海外業務が大きいため、国内銀行だけの視点でも測れません。利益変動の経路は複数あります。
年初来高値に近く好決算を織り込んだ反動に注意
8月5日終値8,470円は、7月23日の年初来高値8,816円を約4%下回る水準です。PBRは約1.79倍で、低PBR修正を狙って買う段階から、成長率の持続性を選別する段階へ移りました。
決算後に上昇しても、会社計画を大きく上回る材料がなければ利益確定売りが出やすくなります。信用買い残が積み上がる局面では、下落時の売りも増えやすくなります。平均目標株価との差も小さく、短期的には期待先行の反動を想定しておくべきでしょう。
金利急上昇で外国債券の評価損が拡大するリスク
2026年6月末時点で、みずほFGの外国債券には約3,870億円の評価損がありました。金利が上がると既発債券の価格は下がるため、貸出利ざやの改善と同時に保有債券の含み損が膨らむ場合があります。
評価損が直ちに純利益へ全額反映されるわけではありません。ただし、売却が必要になれば損失が実現します。金利ヘッジの効果にも限界があります。追加利上げを好材料として見る際は、国内外の債券ポートフォリオもセットで確認すべきです。

海外景気・為替変動・信用コストが利益を下押しする可能性
みずほFGは米州やアジアで投資銀行業務を展開しており、海外景気の悪化は融資先の信用力や案件収益へ影響します。円高が進めば、海外利益を円換算した金額が減る可能性もあります。
反対に急な円安は、輸入物価を押し上げ、日銀の利上げペースを速めかねません。企業の資金調達負担が急増すると、貸倒れや引当金も増えます。金利・為替・信用コストは別々ではなく、連動するリスクとして捉える必要があります。海外案件の採算も同時に点検します。
まとめ|みずほFGの株価は利益成長が高い評価に追いつくかが焦点
みずほFGは、国内金利の正常化、非金利収益の拡大、株主還元の強化が重なり、利益とROEを大きく改善させました。1Qの進捗を踏まえると、27年3月期の最高益更新には現実味があります。
一方、株価は5年で約6倍となり、PBRも他のメガバンクを上回りました。業績は強いものの、現在値を明確な割安水準と判断できる材料は乏しいというのが結論です。
投資判断では、9月の日銀会合、2Qの金利ざやと非金利収益、信用コストを確認したいところです。追加利上げだけを追うのではなく、ROE12%台を維持しながら利益を積み上げられるかが中期的な株価評価を決めます。
金利上昇による債券評価損や景気悪化も忘れてはいけません。好材料が多い局面ほど、利益の質とバランスシートを冷静に比べる姿勢が求められます。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 アナリスト
準大手の証券会社にて資産運用のアドバイザーを務めた後、日本株主力の投資顧問会社の支店長となる。現在は日本投資機構株式会社の筆頭アナリストとして多くのお客様に株式投資の助言を行いつつ、YouTubeチャンネルにも積極的に出演しており、資産運用の重要さを発信している。

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