メタ・プラットフォームズ(META)の株価は、2026年9月8日の終値613.48ドルから、9月23日の終値744.10ドルへ約21%上がりました。9月8日はAIエージェント「Muse」の公開日です。それでも株価は1年前の水準をわずかに下回っています。
上昇の背景にはMuseの収益化への期待があります。ただし、株価が以前の水準を下回っているだけでは割安とは判断できません。次の決算では、課金や手数料の説明に加え、広告の成長とAI投資後に残るキャッシュフローを確認します。
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Meta株が約21%上昇|Museの広告以外の収益化に期待

Meta株の買い材料となったのは、Museが広告に頼らない収入源を料金付きで示した点です。公開後2週間でダウンロード数と株価がそろって伸び、9月21日の1日で株価は11%を超える上昇となりました。
Museとは|メール送信から買い物まで代行するAIエージェント
Museは、質問に答えるだけでなく作業そのものを代行するAIエージェントです。Metaは2026年9月8日(米国時間)に米国で提供を始め、iOSとAndroidのアプリ、Webのmuse.ai、WhatsAppから使えます。
メールの送信、旅行の予約、フォーム入力、商品の購入までを利用者に代わって進めます。アプリを閉じた後も作業を続け、送信や購入の直前には本人の承認を求める仕組みです。動く場所は、利用者ごとにクラウド上へ用意された専用の仮想マシンです。
公開12日間で280万ダウンロード、App Store首位に
調査会社Apptopiaの推計をロイターが報じたところでは、Museは公開から12日間で280万回ダウンロードされました。9月21日時点では、米国のApple App Storeで無料アプリの首位に立っています。
Metaは7月の決算説明会で、Meta AIに新モデル「Muse Spark」を組み込んだ後、1日に使う人が60%増えたと説明していました。Facebookなど自社アプリを毎日使う人は2026年6月平均で36億人に上ります。Museの利用者数とは異なりますが、自社サービスを通じて利用を広げられる強みがあります。
9月21日に11.34%高、公開後の時価総額増加は2,000億ドル超
Meta株は9月21日に前営業日比11.34%高の741.25ドルで取引を終えました。公開日の終値613.48ドルからは約21%高く、ロイターは時価総額の増加が2,000億ドルを超えたと伝えています。
同じ日にはインテルやAMDも大きく上げ、22日には金融株が下落しました。ロイターは23日、週内に保険や旅行予約などの銘柄にも売りが広がったと報じています。AIエージェントによる価格比較や乗り換えが、既存企業の顧客維持を難しくするとの警戒が背景の一つです。

Meta Connect 2026の発表内容|Museは手数料で稼ぐ方針が示された

日本時間9月24日朝の基調講演では、Museのパソコン操作機能と買い物の提携先拡大が発表され、ザッカーバーグCEOは手数料で稼ぐ方針を明言しました。一方、AIグラスなどハード事業は赤字が続いています。
Museの新機能|パソコン操作と専用メールアドレスの導入を発表
米Engadgetの現地速報によると、基調講演ではMuseのパソコン操作機能と専用メールアドレスの導入が発表されました。パソコン操作は、すでに提供されているMac版アプリに加わる機能です。
専用アドレスは、自分の受信箱へのアクセスを許可せずに連絡を任せたい人の選択肢になりそうです。ただし、新機能の発表だけでは利用者数や取引件数の増加は分かりません。実際に利用できる機能の範囲と、継続利用につながるかを確認する必要があります。
AIグラスは業績への寄与が小さい|RL部門は4-6月期に46億ドルの赤字
AIグラスやVRを担うリアリティ・ラボ(RL)部門の2026年4-6月期の売上高は4.31億ドルでした。前年同期比16%増とはいえ、全社売上高608.01億ドルの1%に届きません。
同じ期間のRL部門の営業赤字は46.19億ドルで、2025年通期の赤字は191.93億ドルでした。新型グラスの販売拡大が利益にどれだけ寄与するかは、売上と費用の両方で確かめる必要があります。現在の売上規模だけで、発表後の株価反応までは判断できません。

Museの年換算売上108億ドル試算|2025年全社売上高の約5.4%に相当

Muse単独の売上実績はまだ開示されていません。米ジェフリーズの試算は、利用者数と有料転換率に仮定を置いた年換算売上です。料金と会員数から規模を考える材料にはなりますが、Metaの会社計画や収益の上限を示す数字ではありません。
無料・月20ドル・月100ドルの3プランで収益構造を分解
Museは基本機能を無料で提供し、使う量が多い人向けに月20ドルと月100ドルの有料プランを用意しています。利用量に応じた料金設定ですが、プラン別の会員数や売上構成は公表されていません。
月20ドルの会員が100万人いて全員が1年間利用すると年2.4億ドル、1,000万人なら年24億ドルです。後者は2025年の全社売上高2,009.66億ドルの約1.2%に相当します。実際の売上は有料会員数だけでなく、利用を続ける期間や上位プランの比率でも変わります。
ジェフリーズ試算「10億人・課金率3%以上で年換算108億ドル」の前提
ロイターによると、ジェフリーズは2027年末までにMuseの利用者が10億人に達し、少なくとも3%が有料版へ移る場合、年換算108億ドルの売上につながると試算しました。課金率を3%ちょうどと置けば会員は3,000万人で、年108億ドルには1人あたり月30ドルの平均売上が必要です。
月20ドルと月100ドルの2プランだけで割引がないと仮定すれば、平均月30ドルには有料会員の8人に1人が月100ドルを選ぶ計算です。これは料金からの逆算例で、実際の加入比率ではありません。利用者数とダウンロード数も異なるため、公開初期のダウンロード数から目標までの伸び率は算出できません。
株価上昇の評価には売上規模に加えて利益率と運営費用も必要
年換算108億ドルは、比較のため2025年の全社売上高に当てはめると約5.4%に相当します。これは2027年の売上構成比ではありません。また、「時価総額が2,000億ドル超増えた」という報道の数字を、Museだけが生み出した企業価値として扱うのは適切ではありません。
株価には広告事業の成長や金利、市場全体の動きも影響します。Museへの期待を評価するには、売上だけでなく運営費用と利益率、成長の持続性も必要です。サブスクと取引手数料が、それぞれどれだけ利益を残せるかを確かめたいところです。
取引手数料も収益源に|買い物を代行するモデルを目指す

取引手数料は、Museが今後目指す収益源の一つです。MetaはMuseの会話や専用VM内のデータを、自社の広告システムと共有しないと説明しています。手数料収入の実績や売上に占める割合は、まだ確認できません。
Shopify・PayPalなどと提携し、購入・決済への対応を拡大
ConnectではShopify・PayPalとの提携や、ウォルマート、ベストバイ、Instacartなどの対応予定が紹介されました。Shop Payは9月8日のMeta発表では提供予定で、提携の発表と提供開始は別です。利用できる時期や対象店舗は個別に確認する必要があります。
支払いはStripeの「Link」が1回限りのカード番号を発行し、本物のカード情報を隠します。米国勢調査局によると、2026年4-6月期の小売売上高に占めるEC比率は季節調整済みで17.1%となり、前年同期の16.3%から上がりました。オンライン小売市場の拡大は、購買代行サービスの事業機会につながります。
Amazonの遮断が示す外部サービス依存の壁
アマゾン・ドット・コムは9月20日夜(米国時間)までに、Museによる自社サイトでの買い物を遮断しました。米GeekWireによると、AmazonはMuseがエージェントだと名乗らずに動き、利用者のログイン情報を扱う点を問題視したと説明しています。
Metaの説明では、Museはパスワードや決済情報を見られない設計です。とはいえ、大手サイトが同じ対応を取れば、Museが代行できる買い物の範囲は狭まります。提携先を増やせるか、遮断が広がるかは、将来の手数料モデルにも影響します。
見落としがちなAI投資負担|4-6月期のFCFは7.8億ドルに縮小

MetaはMuseを含むAIサービスや既存事業の計算基盤に巨額の資金を投じています。2026年4-6月期は増収でも減益となり、フリーキャッシュフロー(FCF)は7.84億ドルまで細りました。ここで示す投資額と費用は、Muse単独ではなく会社全体の数字です。
4-6月期は28%増収でも営業利益8%減
2026年4-6月期の売上高は608.01億ドルで前年同期比28%増えました。一方、営業利益は187.75億ドルで8%減り、営業利益率は43%から31%へ下がっています。
訴訟関連費用24.0億ドルと退職費用11.8億ドルを単純に足し戻した弊社試算では、営業利益は223.55億ドルで前年同期の報告値を約9.4%上回ります。会社公表の調整後利益ではありません。研究開発費も216.56億ドルと約67%増えており、一時費用だけでなく継続的な費用増も確認が必要です。
設備投資は最大1,450億ドル、長期債務は約837億ドルに増加
Metaは2026年の設備投資を、ファイナンスリースの元本返済を含め1,300億〜1,450億ドルと見込みます。1月の1,150億〜1,350億ドルから4月に1,250億〜1,450億ドルへ増額し、7月は下限だけを引き上げました。2025年実績722.2億ドルの約1.8〜2.0倍で、上半期の実績は509.18億ドルでした。
4-6月期の営業キャッシュフロー318.62億ドルから設備購入とリース元本返済を差し引いたFCFは、前年同期の85.49億ドルから大きく減りました。長期債務は2025年末の587.44億ドルから6月末に836.64億ドルへ増え、投資拡大とともに長期債務も増加しています。

AI投資はAMD・インテルの半導体需要にも波及
Museが話題を集めた9月21日、インテルは取引時間中に11%超、AMDは8%超上昇しました。AIエージェントはサーバー向けCPUの処理を多く使うとの見方から、AMDの時価総額は初めて1兆ドルを超えました。
Metaの設備投資は主にサーバー、データセンター、通信網に向かい、関連企業への発注拡大につながる可能性があります。Meta株だけでなく、半導体やデータセンター関連企業も投資候補になります。ただし、各社の受注や利益への寄与は個別に確認が必要です。
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1年前を下回る株価でも割安とは限らない|利益と投資負担を確認

9月23日の終値744.10ドルは、Muse公開日の終値から約21%上がった一方、1年前の水準を下回ります。ただし、過去より株価が低いだけでは割安とは判断できません。利益成長への期待と、AIへの支出がキャッシュフローに与える影響を合わせて考える必要があります。
約21%上昇でも1年前の株価を下回る|2025年8月の790ドル水準を比較
過去5年の値動きをたどると、2022年10月31日週の週末に当たる11月4日の終値は90.79ドルでした。その後、2025年8月12日の終値は790ドルまで上昇しましたが、2026年3月27日には終値525.72ドルへ下げています。
9月23日の終値744.10ドルは、1年前の755.40ドルを約1.5%下回ります。2025年8月12日の終値790ドルより約5.8%低く、そこまで戻るには約6.2%の上昇が必要です。過去の価格との距離は、今後の上昇余地や適正価格を保証するものではありません。

一時的な税効果で純利益が変動|PERだけでは投資負担を測れない
Metaの2025年7-9月期には一時的な税負担159.3億ドル、2026年1-3月期には税効果80.3億ドルが計上されました。こうした税効果は純利益や1株利益を動かすため、実績PERを読む際にも注意が必要です。営業利益の伸びと分けて確認します。
予想PERで比較する場合も、同じ基準日の株価と同じ予想期間をそろえる必要があります。さらに、利益予想だけでは設備投資による現金支出の大きさを把握できません。営業キャッシュフローの増加が設備投資の拡大に追いつくかも確認したい点です。
次回決算ではMuseの収益化とAI投資負担を合わせて確認

4-6月期の広告は前年同期比約28%増収と堅調です。次回の7-9月期決算では、広告の成長が続くかに加え、Museの利用状況や収益化について会社が何を説明するかを確認します。発表日は日本時間9月24日朝の公式IR確認時点で未公表です。
その他収入が四半期10億ドルからどこまで伸びるか
Museの課金収入を見る際は、Family of Apps(FoA)の「その他収入」が確認候補になります。この収入は2025年4-6月期の5.83億ドルから、2026年4-6月期には10.07億ドルへ増えました。直近の前四半期比は1.23億ドル増です。RL部門の売上は、この項目には含まれません。
これまでの伸びはWhatsAppの有料メッセージとサブスクが中心でした。Museは9月8日公開のため、7-9月期の提供期間は約3週間です。その他収入の増加だけではMuseの寄与を判別できません。会社による売上の内訳や有料会員数の説明も必要です。
取引手数料は料率・対象取引・運営費用の説明を確認
取引手数料については、料率・対象取引・取扱高の説明を確認します。提携先が増えても、すべての購入でMetaが同じ料率の手数料を得るとは限りません。売上につながる取引の範囲と、実際に使われる頻度を確かめる必要があります。
サブスクに手数料が加われば収益源は広がります。ただし、取引を処理する計算費用や提携先との収益配分によって、残る利益は変わります。数字が開示されない場合はMuseの寄与を切り分けにくくなりますが、それだけで株価下落や利益確定売りを予測するのは難しいと考えます。
外部サイトの遮断と設備投資の上振れは収益化のリスク
Amazonに続いて大手サイトがMuseを締め出せば、代行できる取引の範囲が狭まります。また、営業キャッシュフローの伸びを超えて設備投資が増えれば、FCFの回復は遅れます。収益化の遅れと投資負担の増加が重なる展開には注意が必要です。
Metaは2027年の設備投資額について、具体的な見通しをまだ示していません。米財務省の米10年債利回りは9月23日に5.11%となり、成長株の評価には重荷となり得ます。収益化の遅れと投資負担の増加が重なれば、Museへの期待で上昇した株価が調整する可能性があります。
まとめ|Meta株はMuseの収益開示を決算で確かめてから判断

Meta株の上昇には、Museによる広告以外の収益化への期待が背景にあります。ただし、1年前より株価が低いだけでは割安とは言えず、今後の利益成長と投資負担の両方を確かめる必要があります。
ジェフリーズの年換算売上試算は、利用者数と有料転換率に仮定を置いた数字です。サブスクや取引手数料の実績に加え、運営費用を差し引いてどれだけ利益が残るかにも注目します。
次回決算では、Museの収益化に関する説明と、AI投資後に残るキャッシュフローを確認します。FCFの縮小とAmazonの遮断は、下振れ要因として残ります。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 テクニカルアナリスト(CMTA®)
著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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