ルクレ(648A)は、工事写真の管理サービス「蔵衛門」を主力とする企業で、2026年10月15日に東証グロース市場へ上場する予定です。公開価格は1,480円に決まりました。
業績は売上の拡大とともに利益率が上がっていますが、公開価格の評価は2027年9月期の大幅増益計画に支えられています。投資では、利益成長が計画どおり進むかに加えて、上場後の株価が成長期待を先取りしすぎていないかも確かめたい銘柄です。
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建設DXの需要は人手不足と記録業務の負担から広がる

建設業では働き手の確保が難しく、工事写真の整理のような記録業務の効率化が求められています。ただし需要の広がりがそのままルクレの売上になるわけではなく、有料導入をどれだけ獲得できるかが業績を左右します。
建設現場では工事写真の整理と台帳作成が負担になる
総務省の労働力調査によると、2025年平均の建設業就業者は478万人でした。国土交通省の調査では、2026年8月の全国8職種の労働力過不足率は1.3%の不足です。特定の8職種に限った数値で建設業全体の求人状況ではありませんが、現場に人手の余裕がない様子はうかがえます。
2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。工事写真は工種や工程、撮影内容ごとに分類し、写真台帳にまとめて提出要件に合わせなければなりません。撮影後の整理と台帳作成は現場監督の残業につながりやすく、効率化の需要を生んでいます。
省人化需要が追い風になる一方、顧客の開拓が成長の条件
国交省が2024年4月16日に公表したi-Construction 2.0は、2040年度までに2023年度比で少なくとも3割の省人化と、生産性1.5倍以上を目標に掲げています。ルクレの受注を保証する政策ではありませんが、記録の共有や施工管理の省力化を後押ししています。
同社が示す対象市場9,446億円は、2025年度版の建設投資見通しに、JUAS調査の売上高に対するIT予算比率1.25%を掛けた会社試算です。写真管理だけの実測市場ではなく、売上を伸ばすには新規顧客の有料導入と継続利用が必要です。
ルクレは蔵衛門を軸に記録業務のクラウド化を進める

ルクレは1995年9月に富士通の社内ベンチャー制度で設立され、2009年3月に富士通との資本関係を解消しました。現在は写真などの記録を扱う記録DXプラットフォーム事業を単一セグメントで展開しています。
施工記録が中核で、保育・教育と自動車整備にも展開
会計上は単一セグメントですが、管理上は施工記録・成長記録・整備記録の3領域に分かれます。2025年9月期の売上のうち、施工記録は20.1億円で約69%を占めました。利益の大半もこの領域が稼いでいます。
成長記録は保育・教育施設向けの「みんなの写真屋さん」などで、売上は9.0億円でした。写真店が売主のASP型から、ルクレが売主のプラットフォーム型へ移り、売上計上の範囲が広がっています。同期の増収は利用者の増加だけでは説明できません。整備記録のAITURBOは2026年6月に始まり、2027年9月期の売上予想は1,500万円にとどまります。
専用端末・クラウド・AIで写真の撮影から共有までつなぐ
主力の蔵衛門は、専用端末の蔵衛門Padとクラウド、写真整理・台帳作成の機能を組み合わせたサービスです。現場で撮影した写真をクラウドへ送り、本社や事務所と共有できます。国交省の基準に沿った写真台帳の作成も支援し、現場と事務所の手作業を減らします。
会社は2026年8月時点で17億枚超の施工写真を記録AIに活用していると説明しています。この蓄積量だけでは他社との精度差までは分かりませんが、現場の写真を認識・分類するためのデータになります。品質の証拠となる原画像を守りながら、記録整理の手間を減らす仕組みです。
蔵衛門プレミアムへの移行で継続課金を積み上げる
蔵衛門はかつて端末やPCソフトの買切りが中心でしたが、現在はIDごとの定額契約である蔵衛門プレミアムへの移行を進めています。顧客が使い続ける限り収入が積み上がるため、売上の見通しが立てやすくなります。
2025年9月末のARRは10.7億円で、前年比約49.5%増でした。ARRは期末時点の継続課金を年換算した指標です。AIを業務で使うサービスを比較する際も、有料契約と継続収益の伸びを追えば、機能への期待と実際の収益を分けて確認できます。
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売上拡大に伴い利益率が改善し、2027年9月期も増益を計画

業績は売上の伸びが費用の伸びを上回り、利益率が段階的に上がっています。2026年9月期はすでに終了しましたが通期実績は未発表のため、本記事では会社予想として扱います。
2025年9月期は売上約31%増、営業利益約4.2倍
2024年9月期は売上22.2億円、営業利益0.78億円で、営業利益率は3.5%にとどまりました。2025年9月期は売上が29.2億円へ約31.3%増加し、営業利益は3.30億円と約4.2倍に拡大しています。営業利益率も11.3%へ上がりました。
売上高から営業利益を差し引いた営業費用は、約21.46億円から約25.90億円へ約20.7%増えました。売上の伸びが費用の伸びを上回り、利益率が改善しています。費用を減らして増益を確保したのではなく、費用が増えても利益を伸ばせた期です。
2026年9月期3Q累計の営業利益率は20.0%に上昇
2026年9月期の第3四半期累計(2025年10月〜2026年6月)は、売上24.7億円、営業利益4.95億円でした。営業利益率は20.0%となり、前期通期の11.3%から一段と上がっています。9カ月間の営業利益だけで、前期通期の約1.5倍に達しました。
通期の会社予想は売上34.73億円、営業利益6.88億円、1株当たり利益(EPS)60.67円です。3Q累計を差し引くと、第4四半期に必要な売上は約10.0億円、営業利益は約1.93億円となります。既に終了した四半期の実績は、今後の通期決算で確認します。
2027年9月期は営業利益12.1億円を計画
2027年9月期の会社予想は、売上41.77億円(前期予想比20.3%増)、営業利益12.12億円(同76.2%増)です。営業利益率は29.0%まで上がる計画で、純利益は7.92億円、EPSは97.51円を見込んでいます。
2026年10月5日には、EPSの記載が91.73円から97.51円へ訂正されました。記載の誤りを直したもので、純利益予想を引き上げた修正ではありません。増収率20.3%で増益率76.2%という計画は、費用の伸びを抑える前提に立っており、達成は保証されていません。

公開価格1,480円の評価は2027年9月期の利益計画が鍵

公開価格は2026年10月5日に1,480円で決まり、仮条件1,390〜1,480円の上限でした。2026年10月9日時点では未上場で、市場の株価はまだありません。そのため指標はすべて公開価格を基準に計算します。
予想PERは2026年9月期24.4倍、2027年9月期15.2倍
公開価格1,480円を会社予想EPSで割ると、2026年9月期の60.67円では24.4倍、2027年9月期の97.51円では15.2倍です。15.2倍は大幅増益を見込む会社予想に基づく数値で、割安の証明ではありません。
自己株式込み950万株の参考時価総額は140.6億円です。IPO入金前の2026年6月末1株純資産110.78円に対するPBRは13.4倍となります。2027年予想EPSは、オーバーアロットメント(OA)に伴う最大50.1万株の処分を含みません。

上場後は初値と公開価格の差にも注目する
上場後に株価が公開価格から離れれば、指標も変わります。上場後の株価を同じEPSで割り直すと、株価が高いほどPERは上がります。初値が公開価格を上回った場合、公開価格ベースの15.2倍をそのまま当てはめないよう注意が必要です。
配当利回りも同じ考え方で見直します。2027年9月期の予想配当24円は、公開価格に対して1.62%ですが、取得価格が上がれば利回りは下がります。2026年9月期の予想配当8円は基準日が上場前の9月末にあたり、IPOで取得した投資家には権利がありません。
ルクレの成長は有料契約の拡大と利益率の維持を追う

今後の株価を考えるうえでは、有料契約がどこまで増えるかと、費用の伸びを抑えて利益率を保てるかが中心になります。ここでは次の決算以降に確かめたい項目を、数値とともに整理します。
ストック売上の増加が続くかを次の決算で確かめる
全社売上に占める施工記録のストック売上は、2026年9月期3Q累計で38.2%です。過年度の通期比率との比較は集計期間が異なります。2026年6月末の有料IDは122,380、契約社数は12,264社でした。
有料IDは契約上利用できる数で、日々の実利用者数ではありません。会社は2027年9月期に、前期見込み比でID約26%増、契約社数約21%増を計画しています。契約社数と1社当たりIDの両方が増えれば、継続課金の拡大を支えます。

営業費用の増加を吸収できる売上成長が必要になる
2027年9月期の計画では、売上の20.3%増に対し、変動費は2.6%増、固定費は9.9%増にとどまります。売上の伸びが費用の伸びを大きく上回る想定のため、営業利益率29.0%の計画が成り立っています。
人件費や広告費、開発・サーバー費用が売上以上に増えれば、利益率は計画を下回ります。2025年9月期のエンタープライズ契約の月次解約率は0.16%(12か月平均)でした。各月の解約社数を月末の契約社数で割った比率の単純平均で、工事単位のパックは対象外です。クラウド移行の鈍化や解約の増加が見えれば、見通しは弱まります。
競合との機能・価格の違いが契約拡大を左右する
写真管理AIには新規参入もあります。JAPAN AIとCONOCは2026年9月1日、写真整理などを支援する「ゲンバフォトAI」「ゲンチョウAI」の提供開始を発表しました。ルクレも、写真の分類や帳票対応、端末の操作性、価格で選ばれ続ける必要があります。
専用端末とクラウドの一体提供はルクレの特徴ですが、競合との違いが契約増加や継続利用につながるかを決算で確かめます。工事や子どもの画像を扱うため、情報管理もサービスの品質に含まれます。漏えいやシステム停止で顧客の信頼を失えば、利用継続にも響きます。
公開規模56.8億円と既存株主の売出しには注意が必要

IPOでは公開株数の多さと、既存株主の売出しの比率も確認が必要です。今回は公開規模が約56.8億円で、その大半が既存株主の売出しです。上場後の需給への影響を整理します。
公開株数は発行済株式総数の約40.4%に相当
公開株数は、公募50万株、既存株主による買取引受の売出し284万株、オーバーアロットメントによる売出し50万1,000株の計384万1,000株です。公開価格で計算した公開規模は約56.8億円で、発行済株式950万株の約40.4%にあたります。
この割合は、東証が定める流通株式比率や浮動株比率とは異なる指標です。価格決定時の資料では、需要の申告が公開株数を十分に上回り、仮条件の上限価格に集中したとされています。ただし需要の強さは初値の上昇を保証しません。
自己株式処分と売出しでは資金の受取先が異なる
公募50万株は新株発行ではなく自己株式の処分です。会社への払込総額は、引受価額1,361.60円から計算した6億8,080万円で、諸費用控除前です。既存株主の売出し284万株は、公開価格ベースで42億320万円となります。
公開規模のすべてが会社に入るわけではありません。自己株式処分で発行済総数は変わりませんが、自己株式を除く株数が増えてEPSに影響します。OAに伴う最大50.1万株の処分は、実施株数と追加資金が結果次第で確定します。

ロックアップの期限と例外も上場後の売り圧力に関わる
TAKや役員・従業員株主、新株予約権者などには、2027年4月12日までのロックアップがかかります。主幹事の書面同意なしの売却等を制限する取り決めですが、主幹事は全部または一部を解除できます。会社の株式発行等の制限にも、公募での自己株式処分などの例外があります。
潜在株式は80万5,000株で、発行済株式の約8.5%です。オーバーアロットメントのカバー取引期間は2026年10月15日〜11月6日、第三者割当の払込日は同年11月11日ですが、市場での買付が必ず行われるとは限りません。ロックアップ期限後の売却も確定ではないため、株主の動向を追う必要があります。
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まとめ|ルクレは利益成長と上場後の売買を確かめたいIPO

ルクレは、工事写真の管理から継続課金を広げてきた企業です。建設DXへの期待を投資につなげるには、有料契約の拡大が利益成長を支え続けるかを確かめる必要があります。
上場後は、実際の株価と、会社の利益計画がどこまで実現したかを合わせて見たいところです。公開価格で計算した指標を、高くなった株価へそのまま使わないようにします。
初値の勢いだけで買いを急がず、決算と売出株の消化を待つ選択肢もあります。成長期待と投資価格が釣り合うかを確かめながら、上場後の動きを追いたい銘柄です。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト。

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